風土47
我が県のなつかしの味! パート Ⅵ
今回は「昔懐かしいお菓子」が揃いました。
子どもの頃、友達と、兄弟と、おじいちゃんおばあちゃんと……お菓子を食べた時間は幸せでしたね。
ほんわかとした温かな気持ちになります。
そう考えると、幸福な気持ちを一瞬で思い出させてくれるお菓子って偉大ですね。
取材/撮影 中元千恵子(トラベルライター 日本旅行記者クラブ、日本旅のペンクラブ会員)
※ご紹介した商品は品切れしている場合があります。在庫を各アンテナショップにてお確かめください。
*記載の商品価格は、2014年4月の消費税増税後の税込み価格になっております。
〈鹿児島市・セイカ食品㈱〉
ボンタンアメ(8粒×6箱 422円)
 いきなり、とっても懐かしいお菓子の登場だ。鹿児島出身の方でなくても、このパッケージ、そしてオブラートに包まれたオレンジ色の飴を見たら、「懐かしいー」と顔がほころんでしまうはず。
 今では全国区のボンタンアメ。この銘菓が生まれたのは大正13年だという。南九州特産のボンタン(文旦ともいう)の果汁が使われている。メーカーのホームページによれば、主原料は飴、砂糖、麦芽糖、もち米。そこに鹿児島県阿久根産の文旦から抽出したエキス(ボンタンオイル)や、いちき串木野周辺のサワーポメロ(文旦)果汁、九州産うんしゅうみかん果汁を加えているという。
 なめらかな口当たりと豊かな香り、噛めばほんのりと甘く、麦芽の風味も口に広がる。やさしい、やさしい味。「おばあちゃんの家に遊びに行くと必ずありましたね」とショップのご担当者も懐かしそうに話してくれた。
 南国の空を思わせる青と鮮やかな黄色のパッケージも素敵です。
ボンタンアメ
あげ餅
〈さぬき市・三好松月堂〉
あげ餅(200g 540円)
 「香川県民で知らない人はいないと思います。私も小さい頃から食べていました。お店にも『あげ餅を置いて』という要望があって、入荷するようになりました」と、ご担当者。「サクサクとした食感、ほんのりとした甘み、本当においしんですよ」と、にこやかに話してくださる。その表情からも、地元で愛されている商品なのだな、ということが伝わってきた。
 原材料はもち米と砂糖と少しのふくらし粉と、いたってシンプル。餅をついて四角い型に入れて固め、カッチカチになったところを薄くスライス。これをよく乾燥させ、180度の高温でからりと揚げるのだという。揚げる前はクレジットカードほどの大きさだが、揚げると手のひら以上の大きさに。
 食べてみると、かき餅などと違って、ほんのりとした甘さが特徴。歯応えもほどよくて、後を引く不思議なおいしさだ。気温が高いとおいしい餅が作れないため、例年10月頃~4月頃までの限定生産だという。かなりこだわって作られています。
〈倉敷市・梶谷食品㈱〉
シガーフライ(174g 221円)
 「これ、知ってる」「おいしいよね」と思われた方も多いはず。ボンタンアメ同様、シガ―フライももはや全国区のお菓子。「岡山県のお菓子だったの!?」と驚かれた方もいらっしゃるかもしれない。
 昭和19年創業の梶谷食品が、半世紀以上作り続けているロングセラー商品だ。小麦粉、砂糖、油脂を練り上げて作った焼き菓子。カリッと歯触りがよく、ビスケットの口溶けの良さも持つ。ほんのり甘く、香ばしい。食べ始めると、やめられない、止まらない。
 このおいしさは、主原料の小麦粉とオーブンでの充分な火通りから生まれるのだという。使用する小麦粉はロットごとに成分検査を行うなど十分な品質管理を行い、受注生産を基本方針として、いつも作りたてのフレッシュな状態で出荷するそうだ。シンプルなお菓子だけに、細かいところで味に違いが出るのだろう。
 長い間、全国で愛されている商品は、やはりいろいろな工夫がされているのですね。
シガーフライ
すはまけんけら/黒ねじ
〈越前市・朝倉製菓〉
すはまけんけら(120g 399円)
黒ねじ(115g 399円)
 創業130年の老舗「朝倉製菓」は、地元に伝わる「越前むかし菓子」シリーズを販売。アンテナショップの店頭にも、大豆やきな粉、ゴマなどヘルシーな材料を使った昔ながらのお菓子が並んでいる。朝倉製菓がある旧武生市(現越前市)は、かつて越前国の国府が置かれていたところ。古くから栄えた町で、和菓子の文化も育まれてきたのだろう。
 今回、そのシリーズから選んだのは、「すはまけんけら」と「黒ねじ」だ。「すはまけんけら」は、やわらかな食感で、きな粉と水飴のやさしい甘さ、ほんのりと余韻を残す白ゴマの風味が印象的。「黒ねじ」は、米に圧力かけた後に一気に開放する「ポン菓子」と、きな粉、黒砂糖を主原料に作られる。ほどよい歯応えがあり、黒砂糖のふくよかな甘さが口に広がる。ポン菓子のプチっとした食感も味のアクセントに。
 どちらも素朴でやさしい味だ。子どもからお年寄りまで誰にでも好かれそう。お菓子の原点ともいえるこれらを味わうと、現代のお菓子はちょっと甘過ぎるのかなぁと考えさせられてしまいました。
〈雫石町・小岩井乳業㈱〉
まきば牛乳(200mℓ 135円)
まきばコーヒー牛乳(200mℓ 135円)
まきばフルーツ牛乳(200mℓ 135円)
 「給食に出たり、銭湯などでも売っていて、岩手県内の誰もが知っていると思います。コーヒー牛乳やフルーツ牛乳も昔からありましたね」とショップの方が紹介してくれたのがこの商品。明治24年創業の小岩井農場で作られている牛乳だ。
 今回はお菓子シリーズになっているが、お菓子を食べるときは飲み物も必要ということで、岩手県からは牛乳のご紹介だ。
 小岩井ブランドといえば、日本の牧畜業のさきがけの一つ。岩手県雫石町にある小岩井農場には、明治時代に建造された木造四階建ての倉庫やレンガ造りのサイロなど、貴重な建築物が残り、長い歴史を伝えている。その建築物は、ユネスコ世界文化遺産に関する諮問機関であるイコモス(国際記念物遺跡会議)が「欧米牧畜業の技術を導入し、営まれ続けている農場コミュニティの景観」とし、2017年に「日本の20世紀遺産20選」に選出している。
 数年前、現地に取材に行ったことがあるのだが、本当にのどかで美しい風景が広がっていた。あの環境で育つ牛の牛乳ならおいしいはずです。
まきば牛乳/まきばコーヒー牛乳/まきばフルーツ牛乳
お茶餅
今月のおまけ
〈花巻市・岩手阿部製粉㈱〉

お茶餅(1本 150円)
 これ、おいしいです! 実は、岩手県でどちらをご紹介しようか迷ったのがこの商品。いわて銀河プラザ内にある和菓子店「芽吹き屋」に並ぶ「お茶餅」だ。日持ちがしないため、遠隔地には運べず、東京都内で販売されているのはおそらくここだけではないかといわれている。
 串に刺した平たいお団子に、クルミ味噌を塗ってあぶったもので、盛岡市周辺でよく食べられるという。やわらかくてなめらかな餅、クルミのコク、少し焦げた甘い味噌の香ばしさが調和して抜群のおいしさだ。
 「盛岡では、畑仕事などの合間のおやつを〝小昼(こびる)“というのですがそれにもよく出されます。『こびるっこ食べて』と言って、お茶餅を出したりしますね」とお店の方が話してくれる。
 銀座に行ったら、ぜひ買って食べてみてください。やわらかくておいしいですよ。
 
中元千恵子
中元千恵子 旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。 『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。(朝日新聞デジタル連載記事