風土47
おつまみに最適 この一品
今年も師走です。時が経つのは早いですね。
「今年もいろいろあったなぁ」「来年はこうしたい…」
そんなことを誰かと語り合いながら、あるいは一人でしみじみと考えながら、お酒を楽しみたい季節です。
ということで、今月はおつまみのご紹介です。
今月は、若者風にひと言でいうと「ヤバイ」です。それくらいおいしい。
ぜひ年末のお酒のお供に!
取材/撮影 中元千恵子(トラベルライター 日本旅行記者クラブ、日本旅のペンクラブ会員)
※ご紹介した商品は品切れしている場合があります。在庫を各アンテナショップにてお確かめください。
*記載の商品価格は、2014年4月の消費税増税後の税込み価格になっております。
〈白山市・吉市醤油店〉
醸し漬(鯖)剣先ナンバ入り (1枚 570円)
 これはおいしかった。びっくりです。
 でも、最初にショップの方に勧められたときは半信半疑。「醸(かも)し漬って聞いたことないけど……。サバの漬け物ってどんな味?」。みなさんも思うでしょう?
 醸し漬は、明治17年創業の老舗の醤油屋さんが自家製の醤油もろみを使ってフグの子やサバを漬けたものだ。漬け床にこだわり、清酒絞り粕、糖蜜、塩、酒米糠、みりん、みりん粕など、自社の醤油もろみ以外もすべて厳選した国産品を使っている。
 食べ方は簡単で、袋から取り出し、周りについている漬け粕を軽く取って薄くスライスするだけ。そのまま食べられる。
 塩辛いのかなあ……と思いながら食べてみると、おいしい! まずプリッとした新鮮なサバを思わせる弾力ある食感。そしてなめらかなサバの脂、その脂とよく合う甘みのある深い漬け粕の味。絶妙です。サバの脂を麹がほどよく中和させ、逆にサバの脂を吸うことで漬け粕もおいしくなっている。周りの漬け粕を取り過ぎるともったいないですよ。酒肴にはもちろん、締めのお茶漬けやご飯のおかずにもいい。日本酒派におすすめです。
醸し漬(鯖)剣先ナンバ入り
沖縄風天ぷらもずく|沖縄風天ぷらさかな
〈銀座わしたショップ店内〉
沖縄風天ぷらもずく(1個 108円)
沖縄風天ぷらさかな(1個 108円)
 銀座わしたショップの1階にはイートインコーナーがあり、お菓子のサーターアンダギーやソフトクリーム、揚げ物などを販売している。
 ビール党におすすめなのが、沖縄風天ぷらと沖縄で最大シェアを誇るオリオンビールの組み合わせだ。
 沖縄風天ぷらで人気なのが「もずく」と「さかな」だという。そこで「もずく」と「さかな」、「オリオンビール」を注文。
 まずはもずくの天ぷらから。沖縄県はもずくの生産量、消費量とも日本一で、天ぷらの材料としてもよく使われるという。初めはもっちりとした食感が印象的。そのあともずくのシャキシャキとしたが歯触りが楽しめる。塩味が効いていておいしい。
 「さかな」はシイラという白身の魚を、ふっくらして甘みのある衣で揚げてある。天ぷらと、ドライなのど越しのオリオンビールの組み合わせは最高! 師走でもビールがおいしくいただけます。
〈川俣町・㈱川俣町農業振興公社〉
川俣シャモ 砂肝のアヒージョ(80g 480円)
 これもおいしかった。川俣シャモの砂肝を、オリーブオイル、ニンニク、食塩、黒コショウで煮込んである。
 川俣シャモは、あぶくま高原に広がる川俣町(かわまたまち)の特産として知られる地鶏だ。平飼いといって、鶏が自由に地面を歩き回れる環境や、飼料などにこだわり、最高級の鶏肉を生み出している。さっぱりした味わいなのにうま味が強く、弾力のある食感と長く続く肉の余韻が特徴だという。その砂肝が、おいしくないわけがない。
 まず、食べて砂肝の軟らかさに驚いた。オリーブオイルで煮込むからだろうか。軟らかいけれど弾力があって、噛むごとに鶏のうま味が広がる。塩味が効いていて、さらにガツンとした黒コショウの風味も、強い鶏のうま味を引き立てている。ワインなどのおつまみにもいいが、オリーブオイルごとパスタに絡めたらおいしそうだ。
 “アヒージョ”はオリーブオイルとニンニクで煮込むスペインの小皿料理の一種。やはり洋風のお酒に合います。
川俣シャモ 砂肝のアヒージョ
雀の学校ミックス|黒糖そら豆
〈鹿児島市・㈱大阪屋製菓〉
雀の学校ミックス(14~15g×14袋 378円)
〈鹿児島市・㈲イケワキ食品〉
黒糖そら豆(小)(90g 324円)
 鹿児島のおすすめは、豆菓子4種類。これがまたおいしくて、止まらなくて、撮影時には半分以上が無くなっていました。
 黒糖そら豆は、そら豆を揚げて、黒糖とハチミツをまぶしたもの。黒糖だから甘みが強いのかな……と思ったが、とんでもない。口に入れるとほのかに黒糖の甘さが広がり、カリッとかじるとそら豆の風味がふわっと香り立つ。上手に味が混じり合って、最期まで上品な味。まさに大人の豆菓子だ。「鹿児島産の黒糖焼酎と合わせて飲んだら最高です」と、担当者の方が話してくれたが、さもありなん。残念ながら焼酎を切らしていたのでウイスキーと合わせたら、それもおいしかった。
 「雀の学校・ミックス」には、ピーナッツを和風味の衣でくるんだ「雀の卵」、きなこの衣でくるんだ「きなこ豆」、そして醤油味の「珍々豆」が入っている。どれもおいしかったけれど、特にお気に入りは珍々豆。揚げたピーナッツが香ばしくて、衣の甘さと辛さと醤油風味が絶妙だ。
 かごしま遊楽館では、12月27日まで「ふるさと割」によって対象商品の3割引きを実施している。まとめ買いのチャンスですよ!
〈倉敷市・㈲信和〉
干たこ(3匹 540円)
 これもおいしかったです。
 ショップの方が「幸せを感じる味です。ひと口ではわからないんですが、3回噛んだあたりからじわじわとこの上ないおいしさが口に広がってきます。お酒には最高。リピーター続出です」と、そんな風に解説してくださったが、その通り。私もリピーターになりそうです。
 倉敷市の下津井はタコの名産地。潮流の速い下津井沖で育つマダコは食感がよくて甘いのだという。その下津井タコを干して味付けしてある。食べ方は簡単で、オーブントースターなどで、軽くあぶる(目安は足が少しめくれるくらい)だけ。ちぎって口に入れると、噛めば噛むほどいい味が出てくる。何の味なのだろう。原材料には普通の調味料しか書いてないので、やはりタコの風味なのだろう。おいしい。頭の部分を食べたら、噛んでいるうちに丸い頭が甦ったように弾力が増した。頭だけで5分くらい噛んでいたような気がする。いつまでも味が出てくる。おいしいです。ぜひお試しを。
干たこ
◆今月のおまけ
彩色備前「モダン×備前」
〈備前市・出製陶〉
彩色備前「モダン×備前」
 取材で、とっとり・おかやま新橋館にうかがった日、ちょうど2階のイベントホールで「彩色備前 モダン×備前」(出製陶)という展示を行っていました。
 備前焼といえば六古窯の一つに数えられ、1000年余りの歴史がある焼き物。釉薬(うわぐすり)を一切使用せず、茶褐色の地肌が印象的です。
 けれど、イベントホールで目にした作品の色鮮やかなこと! 青や金色、ピンク、空色など、備前焼のイメージを覆す軽やかな色彩の器が並んでいました。
 作者は兄の山本周作氏、弟の領作氏のご兄弟。備前の粘土に顔料を練り合わせることで備前焼に色彩を加えているのだそうです。
 「もっと身近に備前焼を感じて使っていただきたい」という思いで彩色備前を作られているそうです。
 色も、シンプルな形も美しいですね。
〈備前市・出製陶〉
彩色備前「モダン×備前」
 作者はこのお二人です。人間国宝の(故)山本陶秀氏を祖父に、岡山県重要無形文化財保持者である山本出氏を父にもつご兄弟。
 作者の方に直接お話を伺える機会なんて、そうそうないですよね。幸運でした。
 アンテナショップに行ったら、ぜひイベントスペースも覗いてみてください。新しい世界に出会えるかもしれません。
彩色備前「モダン×備前」
ノンオイル もずくドレッシング
〈うるま市・もずくの竜宮城〉
ノンオイル もずくドレッシング(200mℓ 540円)
 取材で、銀座わしたショップを訪れた際、試食販売をしている男性に出会いました。
 圧倒的な明るい笑顔と、「食べてみて」というやさしい物腰に足が止まり、食べてみると、「おいしい!」。ノンオイルでさっぱりとして、何よりシークワーサーの果汁を使っているためか酸味がやわらかい。そしてとろみがあって食材によく絡みそうです。
 「2歳のお子さんからお年寄りまでファンが多い商品です」と男性。どうもこの方が社長さんのようです。「大工さんをしてたんだけど、身体を壊してもずく製品の開発に切り替えました」。いろいろご苦労もあったそうですが、この笑顔。アンテナショップはいろいろな出会いがあって、それも楽しいです。
中元千恵子
中元千恵子 旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。 『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。(朝日新聞デジタル連載記事