風土47
忙しいあなたに!クイックおかず
あっという間に食事の支度ができたらどんなにいいでしょう。
疲れ果てて帰った時や家族が急におなかがすいたと言い出した時、パッと魔法のように素敵なおかずができたらこんなにうれしいことはありません。
しかもおいしければ言うことなし。そんな品を集めてみました。
取材/撮影 中元千恵子(トラベルライター 日本旅行記者クラブ、日本旅のペンクラブ会員)
※ご紹介した商品は品切れしている場合があります。在庫を各アンテナショップにてお確かめください。
*記載の商品価格は、2014年4月の消費税増税後の税込み価格になっております。
〈徳島市・徳島大水冷蔵㈱〉
鮎のお茶漬け(1食 216円)
 まるで鮎が泳いでいるかのようなこの豪華なお茶漬けは、徳島の商品。吉野川の水を使った養殖池で育った鮎を、焼いて半身そのままの姿で密封している。
 作り方は簡単だ。ご飯をよそってかやくを入れ、鮎をのせて、だしつゆを好みの濃さにしてかけるだけ。かやくにはあられ、ゴマ、海苔、三つ葉が入っている。
 鮎はやわらかく、上品で淡白な味わい。香ばしいゴマやあられの食感、爽やかな三つ葉、海苔の風味がそれをいっそう引き立てる。だしつゆもかすかな甘みがあり、鮎とよく合う。
 やさしい味なので、飲んで帰って「ちょっとだけ何か食べたい」という時にもおすすめ。料亭のような風雅なお茶漬けが200円というのも魅力だ。
鮎のお茶漬け
牛すじ煮込み
〈益田市・㈲ちるちるみちる〉
牛すじ煮込み(250g 651円)
 これはおいしい。益田市の「松永牧場」で飼育されている黒毛牛「まつなが牛」のすじを、時間をかけて軟らかく煮込んである。
 肉の味は「旨み、甘み、口溶けの良い脂、肉の柔らかさ」などで決まるという。松永牧場の牛は、安心、安全はもちろん、環境や飼料にこだわり、おいしさを追求。飼料には、牛肉のうま味に欠かせない大豆や、おから、もろみなどを加え、さらに果実類も使用してフルーティな味を引き出しているという。
 とにかく軟らかい。肉がホロホロとほどけるよう。そしてぷるぷるとした脂がまたおいしい。甘みがあってコクはあるが、しつこくない。舌の上で溶けていく。
 だし汁たっぷりなので、鍋に移して豆腐や野菜、卵などを入れ、軽く煮込んで食べるといい。手早く、豪華なおかずが一品作れる。一緒に煮る野菜は、味のよくしみるネギがおすすめ。
〈吉野町・林とうふ店〉
豆腐ハンバーグ(3個 530円)
 これもおいしかった。奈良県吉野にある豆腐店が作るハンバーグ。吉野ではこの豆腐店が食事処も営んでおり、店でも豆腐ハンバーグは人気メニューだという。
 口入れるとまず感じるのが、豚肉の甘みとコク。でもしつこくならず、後味がふわっと心地よく消えて行くのが豆腐の作用なのだろう。
 簡単さもうれしい。「ハンバーグって焼くのにけっこう時間かかるのよね」という奥様方の声が聞こえてきそうだが、なんと、焼いてあるので解凍して温めるだけ。「えー、でもソースが付いてないから作らなきゃでしょ?」。いえいえ、たぶん大根おろしとぽん酢が一番合うと思う。つまり温めて大根おろしを作るだけで、おいしいメインディッシュができあがる。冷凍で日持ちもするうえ、1個180円弱! 買い置きにおすすめの品。
豆腐ハンバーグ
さんま南蛮煮
〈北茨城市・㈲ヒオキ食品〉
さんま南蛮煮(2本入り 265円)
 今月は大ヒットで、これもとってもおいしかった。新鮮な国産サンマを、砂糖や醤油、水飴、たまり醤油、生姜などを使って、じっくり煮てある。ちょっぴり唐辛子を効かせ、味を引き締めている。
 「スタッフの間でも大人気で、これを買ってお昼のおかずにするのがブームなんです」と、茨城マルシェの担当者。確かに丸々太ったサンマが2尾、このおいしさ、このボリュームで265円ならお買い得だ。
 もちろん温めればおいしいが、封を開けてそのままでもおいしい。よく煮込まれていて、骨まで軟らかい。個人的には、味が濃くないのがいいと思う。甘さ控えめで、醤油も唐辛子の味もさほど強くない。それでいてご飯によく合う。2本、ペロリと食べられてしまう。写真に1.5尾しか写っていないのは、実はこれほど軟らかいとは思わず、切るのに失敗したのと、味見がひと口で終わらなかったから。おいしいですよ。
〈むつ市・㈲みなみや〉
ほたてしらゆき(70g 594円)
 みなみやは、大正時代に創業し、海産物関係の多くのヒット商品を生み出している。そのみなみやの看板商品の一つがこの「ほたてしらゆき」だ。昭和52年発売以来のロングセラー商品だという。
 誕生のきっかっけは、ホタテにマヨネーズをつけて食べた人から「とてもおいしかったので、そのような商品はできないか?」と要望されたことだという。「ホタテとマヨネーズを和えればいいんじゃないの?」と素人は簡単に考えてしまうが、それではいけないらしい。みなみやはまず、独自のマヨネーズ風調味料を開発。そして、ホタテの風味を損なわないよう、缶詰の内側の素材、詰め方(紙に包んで入れる)等の工夫をし、商品化にこぎつけたという(みなみやのHPから)。
 ホタテの甘みとマヨネーズの酸味がよく合う。大根やキュウリと和えてみたが、個人的にはそのまま食べるのが一番おいしかった。研究され、完成された味なのだろう。パンにぬったり、ご飯にのせたりしてもいいという。
ほたてしらゆき
中元千恵子
中元千恵子 旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。 『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。(朝日新聞デジタル連載記事