風土47
内緒にしておきたかった?店長、スタッフの「私のお気に入り」 Part Ⅱ
ご好評につき、先月に引き続いて、店長やスタッフに個人的なお気に入り商品を挙げてもらいました。
いつもきりっと対応してくださるスタッフが、「これ、おいしいんですよ」と、素の表情で語ってくれたりするのを見ると、食べ物には心を開放する力があるなぁ、なんて思います。
食事を一緒にすると親しくなる、と言われるのも分かる気がしますね。
おいしい物の話は年齢や性別関係なく、楽しいですものね。
どんな方がどんな商品を推薦したのか、ぜひ推薦者も想像しながら読んでみてください。
取材/撮影 中元千恵子(トラベルライター 日本旅行記者クラブ、日本旅のペンクラブ会員)
各ショップお勧め「私のお気に入り」
※ご紹介した商品は品切れしている場合があります。在庫を各アンテナショップにてお確かめください。
*記載の商品価格は、4月の消費税増税後の税込み価格になっております。
〈嘉手納町・山香(やまこう)〉
無添加・まぐろの佃煮(200g 756円)
 いつも多くのお客さんでにぎわう沖縄県のアンテナショップ「銀座わした」。この人気店を切り盛りする快活な女性店長にお気に入りを聞いてみた。
「好きなものがたくさんあって悩むけど、今回はこれかな? かなりに気に入っています」と選んでくれたのがまぐろの佃煮だ。
 え? 沖縄でマグロ?
「実は沖縄はマグロの水揚げ量が多いんですよ。近海で捕れるので、冷凍することなく水揚げされます」
 その“近海”で捕れたマグロを、醤油や砂糖、水あめ、昆布などを使って煮た無添加の佃煮だ。特徴的なのは、ニンニクとゴマが入っていること。ひと口目はニンニクの風味がふっと口に広がるが、ふた口目からはニンニクはほとんど感じなくなる。普通の佃煮より少しコクがあって、ゴマの油の効果なのか、マグロの身もしっとりとしている。甘みも塩味もほどよくて、おいしくいただけました。
無添加・まぐろの佃煮
くりやまコロッケ・ビーフ
〈栗山町・三富屋㈱〉
くりやまコロッケ・ビーフ(5個 400g 411円)
 東京駅八重洲口にある北海道フーディストも北海道のおいしいものが勢揃いして、店に入るだけで気分がアップする。そんなお店の責任者も、しっかり者の若き女性店長さんだ。
「好きなもの、いろいろありますよ。これもよく買います」と、紹介してくれたのがこのコロッケ。札幌から東へ約35㌔の栗山町で作られる人気商品だという。
 冷凍されているコロッケを、油で揚げるだけなので簡単。揚げ時間が短いのもうれしい(私は揚げ過ぎてちょっと焦がしてしまいましたが)。外はかりっとして、中身はしっとりとやわらかく、ほんのり甘い。びっくりするほどおいしいわけではないけど、食べやすくて、飽きのこない味。こういう商品が売れ続けるんだろうなぁ…と納得した。
 ジャガイモやタマネギなど、使用する農産物はすべて栗山産。自社の畑や契約農家で育てたものを中心に使用しているという。牛肉も北海道産だ。ジャガイモは収穫後、低温庫保存し、芽は一つ一つ手作業で取るなど、材料と製法にこだわっている。「ビーフ」のほかに、北あかりという品種のジャガイモを使用した「ポテト」、甘みが強い栗山産カボチャを皮まで使った「カボチャ」もある。
〈いわき市・㈲加茂農産〉
ちびなめこ(1袋 220円)
 4月12日にオープンした「日本橋ふくしま館MIDETTE(ミデッテ)」は、広い店内に山海の幸がずらり。生鮮品から冷凍食品、お酒、スイーツなども揃い、奥にはイートインコーナーもある。
 たくさんの名産品が並ぶ中で、商品をよく知る男性スタッフがすすめてくれたのがこれ。「おいしいですよ。みそ汁に入れるのはもちろん、サッと茹でて、麺つゆや生姜と煮て佃煮にしてもいいです。買って帰ると家族に喜ばれます」。生産する加茂農産は、なんと、ナメコ一筋40年だという。
 買って帰って、みそ汁にしてみた。名前と違って、その大粒なことにびっくり。ぷっくりと肉厚で足も太い。食べ応えがあって味が濃い。何と言っても驚いたのが、ぬめりの多さと美しさだ。ナメコの表面を覆うぬめりの成分であるムチンは糖たんぱく質で、たんぱく質の分解、吸収をよくする働きがあるそうだ。胃や肝臓をいたわり、血糖値の急激な上昇を防ぐとか。…そんなうんちくを知らなくても、体が自然と喜ぶ一品でした。
ちびなめこ
○八極上ふくれ
〈都城市・㈱まるはちふくれ菓子店〉
○八極上ふくれ(1個 360円)
 個人的に、これ、大好きです。「スタッフがお気に入りで…」と紹介されたときは「やったー!」と思いました。
 ふくれ菓子は、宮崎県南部から鹿児島県まで、薩摩地方を中心に古くから愛されてきた郷土菓子。薩摩藩島津家一門に生まれた篤姫も食べたといわれるほど伝統がある。
 まるはちはふくれ菓子店は、平成3年に日本唯一のふくれ菓子専門店としてオープンした。ふくれ菓子の原材料は、卵、小麦粉、砂糖、牛乳、ソーダといたってシンプル。それだけに材料の良し悪しが味を左右するという。卵、牛乳は宮崎県産の新鮮なものを使用し、黒砂糖は専用にブレンドしている。それらを混ぜ、一釜ずつ丁寧に蒸し上げて作る。
 ふっくら軟らかで、ほどよくしっとりして、ほんのり甘い…まさに絶妙の出来です。昔、祖母が作ってくれたなぁ(薩摩地方ではないのですが)と懐かしくいただきました。
〈土庄町・㈱生駒屋〉
小豆島手のべ オリーブの郷そうめん(50g×5束 379円)
 瀬戸内海に浮かぶ小豆島(しょうどしま)は、日本三大素麺(そうめん)の産地であり、日本一のオリーブの生産地でもある。その二つの特産品を組み合わせた商品だ。
 オリーブ素麺は他にもあるが、この商品の特徴はオリーブの果実ではなく、葉を使用していること。オリーブの葉には抗酸化作用の強いポリフェノールの一種オレウロペオン、鉄分、カルシウムなどが含まれる。今まで食用として利用されていなかったオリーブの葉をお茶加工にして小麦粉に練り込むことで、エコと健康を両立させる商品が誕生した。さらに、素麺の表面には通常、油が塗られるが、この素麺ではエキストラバージンオリーブオイルを塗布している。オレイン酸など有効成分を多く含み、酸化もしにくいそうだ。
 のど越しがよくてとてもおいしい。オリーブ色の素麺はかすかにオリーブの味。見た目も涼やかでこれからの季節におすすめだ。
 小豆島ってどんなところ?と思われた方は、今月から始まったこちらのコラムをご覧ください。
小豆島手のべ オリーブの郷そうめん
赤芋焼酎「赤茂作」
〈和泉町・花の香酒造㈱〉
赤芋焼酎「赤茂作」(720mℓ 1,523円)
 「熊本は米焼酎が有名ですが、芋焼酎もおいしいものがあるんですよ」と、男性担当者が手に取ったのがこれ。明治35年創業の老舗酒造が造る赤芋(熊本甘藷)を使った芋焼酎。平成22年度酒類鑑評会で優秀賞を受賞したという。
 原材料の熊本甘藷(高系14号)は、繊維質が少なく、甘みが強く、焼き芋や蒸し芋にしてもとてもおいしい品種。その芋を贅沢に使い、黒麹で仕込んである。ほんのりやわらかな香りと自然な甘みが特徴だ。パッケージのくまモンに目を奪われますが、あくまで品質で勝負、のお酒です。熊本限定品が東京でも買えるようになった。
 “火の国”とよばれる熊本県では、火の国を象徴する“赤”の食品のブランド化をすすめている。熊本には赤い色の名産品が多い。阿蘇の草原で育った「あか牛」、お正月に飲む「赤酒」、馬刺し、クルマエビ、トマト、スイカ、赤なす、イチゴなど。赤芋で作ったこの焼酎ももちろん熊本県赤ブランド認定品だ。
◆今月のおまけ
〈今月のおまけ - 会津坂下町・佐瀬農園〉
露地物グリーンアスパラ(3本 338円)
 日本橋ふくしま館で、思わず買ってしまったのがこの会津坂下町(あいづばんげちょう)産の露地物のグリーンアスパラ。ぷっくり太くて、緑色が濃くて、生き生きして、本当においしそう。目が釘付けになりました。
 売り場の男性スタッフも大絶賛で、「おいしいよ。家内にまた買ってきて、と頼まれます」とのこと。
 蒸してマヨネーズをつけて食べました。甘くて、あっという間に、3本ペロリ。例年、6月上旬くらいまでしか入荷しないそうですが、見つけたらぜひお試しを。
露地物グリーンアスパラ
ゆずの里CC
〈今月のおまけ - 日之影町・日之影特産果樹振興会〉
ゆずの里CC(炭酸)(180mℓ 172円)
 今月の特集で、宮崎県でもう一つの候補に挙がったのが、この商品。日之影町産のユズを使用した炭酸飲料。
 これもおいしかった。ふたを開けると、爽やかなユズの芳香がふわっと漂います。飲んでみると、酸味も炭酸もマイルドで、はちみつのやさしい甘さが印象的。飲み口が爽やかです。これからの季節、冷蔵庫に冷やしてあると間違いなくうれしい。
中元千恵子
中元千恵子 旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。 『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、 『バリアフリーの宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。(朝日新聞デジタル連載記事