風土47
えっ、知らないの!? うちの県では当たり前… 知られざる人気商品 Part IV
お弁当の友 Part III がんばろう!東北 知られざる人気商品 Part I 知られざる人気商品 Part II 知られざる人気商品 Part III
ついに“知られざる人気商品”も第4弾です。こうなったら、きっとこのテーマで全ショップをひと巡りするのでしょうね。
取材する方も楽しい企画です。
「これ、本当に○○県では有名なんですか?」
「誰でも知ってますよ。東京に来て、売ってないのでびっくりしましたもん」
こんな会話をショップ担当者と何回も繰り返しました。
郷土で愛される超ロングセラー商品。今月もその魅力がどこにあるのか、一緒に考えてみていただきたいと思います。
取材/撮影 中元千恵子(トラベルライター 日本旅のペンクラブ、日本旅行作家協会会員)
※ご紹介した商品は品切れしている場合があります。在庫を各アンテナショップにてお確かめください。
 また、商品の価格は掲載時のものですので、変動があることをご承知おきください。
青森市・(有)永井久滋良餅店
板かりんとう(150㌘ 400円)
 板かりんとうは、青森市街から東へ約10㌔の海沿いにある浅虫(あさむし)温泉の名物。ここに明治40年から店を構える永井久慈良(くじら)餅店が作っている。
 小麦粉と砂糖、塩、ゴマを混ぜて、薄切りにしてサラダ油で揚げてある。添加物は不使用。いたって素朴だけれど、これがクセになる味。香ばしくて、ちょっと硬めの生地をポリポリと音をさせて噛んでいるうちに、じわっとうま味味が湧き出る。15年ほど前に取材に行って以来、忘れられない味の一つとなった。
 この店のもう一つの名物が、店名にもなっている久慈良餅だ。津軽米の米粉と餡、砂糖を混ぜ、蒸し上げた軟らかいお菓子。創業者が湯治に来ていた傷痍軍人のためを思って作ったのだとか。小さな温泉地の小さな店が作った2つの菓子が、今では県民すべてが知っている名物に。いいものは周りが放っておかないということなのでしょう。
板かりんとう
味どうらくの里
大仙市・東北醤油(株)
味どうらくの里(500mℓ 450円~)
 「たぶん、秋田のどの家庭にもあると思います。大家族だと、一斗缶で買っておくとか、一升瓶3本くらい買い置きしてあるとか、そういう家も多いと思いますよ」と、ショップの方。とにかく秋田ではメジャーな万能つゆなのだという。しょう油よりこちらを使うことの方が多いとも言われている。
 材料は、しょう油、カツオ節エキス、砂糖、食塩、米発酵調味料、酵母エキスなど。うま味と甘みのバランスがよく、薄めて麺つゆにするのはもちろん、煮物の隠し味や炒めもの、鍋料理、漬物など、和洋中さまざまな料理に使える。
 今でこそこれほど普及した「味どうらくの里」だが、開発当初はまったく売れなかったのだとか。それでもあきらめずに県内を回って営業を続けた結果、これだけ愛される商品になった。強い信念と努力が生んだロングセラー商品。
小笠原村・(有)フリーショップまるひ
パッションフルーツケーキ(14個 1270円)・パッションシャーベット(65g 230円)・パッションゼリー(3個 630円)
八丈島・八丈島花月堂販売(株)
パッションフルーツジャム(150g 500円)
小笠原村・小笠原民芸品センター
パッションジャム(220g 630円)
 パッションフルーツは、アメリカ大陸の亜熱帯地方を原産とするフルーツ。爽やかな芳香と上品な甘酸っぱさが特徴だ。
 日本では沖縄や奄美諸島など主に南の地方で栽培されている。今年6月に世界遺産に登録された小笠原諸島の母島も名産地の一つで、島で一番多く栽培されているのがこの果実。最近は、八丈島でも栽培が行われている。
 取材時にはちょうど生のパッションフルーツが入荷していたが、果実が入荷するのは8月まで。あとはお菓子やジャムでその味を楽しもう。ほどよい酸味と甘みは、いかにも“南の島”から届いた味だ。
 “パッション=情熱”から「情熱の果実」と思われがちだが、実は「キリストの受難の果実」という意味があるという。
パッションフルーツ食品
周山街道
京都市・羽田酒造(有)
周山街道(360mℓ 各441円)
 羽田酒造は、京都市北部の周山にある約110年続く老舗の造り酒屋。地元で栽培した酒造米を桂川上流の伏流水で仕込み、きめ細やかでのど越しがよく香り高い酒を造っている。蔵人が自ら自社田で米を作り、丹精する少量生産の酒には定評があり、京都市民なら誰もがその名を知る蔵元だ。
 「周山街道」はそんな羽田酒造が平成9年に発売した地ビール。すっきりした酸味の「ヴァイツェン」、まろやかな味わいの「ケルシュ」、モルトの香ばしさが特徴の「アンバーエール」の3種類があるが、特におすすめは「アンバーエール」。深みのある琥珀色、きめの細かい泡、そして何と言っても深い味わいがある。キレとのど越しを求める夏のビールとはひと味違う。
 「秋に料理とじっくり味わいたい、そんなビールでしょう?」と館長さん。ほんと、“大人のビール”という感じだ。
松茂町・(株)ハレルヤ
金長まんじゅう(1個 105円)
 小男鹿(さおしか)、ぶどう饅頭と並ぶ徳島の三代有名菓子の一つだという。誕生は昭和12年。白餡をチョコレート風味の皮で包んだチョコレート饅頭だ。饅頭の皮にチョコレートを練り込んだのは日本ではこの製品が初めてといわれている。餡の甘さも皮のチョコレート風味もまろやかで、全体にやさしい味がする。
 商品名の“金長”とは、なんと狸の名前だという。徳島には阿波狸合戦(あわたぬきがっせん)という伝説が伝わる。江戸末期、金長という恩義に熱い狸の軍勢と、四国狸の総大将であり、悪事を働く六右衛門という狸の軍勢が激突した。かろうじて勝って生き延びた金長もやがて命を落とすが、金長大明神として祀られた。この伝説は映画の題材などにも使用され、ジブリ作品『平成狸合戦ぽんぽこ』も一部をモチーフにしているという。
金長まんじゅう
げたんは
鹿児島市・(株)南海堂
げたんは(10枚 315円)
 鹿児島には名産の黒砂糖を使った郷土菓子が多く、その代表ともいえるのがこの「げたんは」。鹿児島ではスーパーなどでも当たり前のように売られているという。
 小麦粉と黒砂糖、卵を主な原料にして生地を作り、板状に延ばして焼き上げる。これを台形に切断して、黒砂糖の蜜の中に漬け込み、そのままパック包装してある。しっとりとして軟らかい。端っこは食べるとじゃりじゃりいうほどたっぷり黒砂糖が使われているが、甘さはしつこくなく、あと味がいい。つい、もう一つ…と手が伸びる。
 黒砂糖はミネラルを多く含むアルカリ性食品なので、適量を食べるのなら健康にもよさそう。地元でも老若男女問わず人気だという。
 名前は、下駄の歯の意味で、もともとの格好が似ているところから付いたといわれる。