風土47
我が県の なつかしの味!
今月の取材で気づいたのは、ふるさとの味は小さい頃に見た風景や家族の思い出とともに語られることが多いことでした。
聞いているとほのぼのとした気持ちに。
各県のなつかしの味を、ショップご担当者のほんのりと心温まる思い出とともにご紹介します。
取材/撮影 中元千恵子(トラベルライター 日本旅行記者クラブ、日本旅のペンクラブ会員)
※ご紹介した商品は品切れしている場合があります。在庫を各アンテナショップにてお確かめください。
*記載の商品価格は、2014年4月の消費税増税後の税込み価格になっております。
〈三郷町・六郷まちづくり㈱〉
仁手古サイダー(300mℓ 206円)
 「小さい頃、うちの近所には『「仁手古(にてこ)サイダーだべ、はまってけれ~(買ってください)』と売りに来ていました。父が好きでよく買っていましたね」と、ショップの女性が話してくれた。
 仁手古サイダーは、なんと100年以上も愛され続けている地サイダーだという。製造地である三郷町六郷は、奥羽山脈の伏流水が湧き出た六郷湧水群で有名な“水の里”。
 その中でも湧水量豊富なニテコ清水の天然水を使用しているのがこのサイダーだ。「ニテコ」はアイヌ語の「ニタイコツ」が語源で「森林の水たまり」という意味がある。
 「水」本来のうまさを引き出すため、やわらかな甘さとまろやかな炭酸に仕上げているとのこと。そう、確かにふんわりした甘さで、あとに残らず、すっきりしている。ピリピリしすぎないので、子どもからお年寄りまで好かれそうなやさしい味。
仁手古サイダー
伝承 鯉うま煮
〈千曲市・㈱加藤鯉店〉
伝承 鯉うま煮(1切れ 540円)
 この商品は、いい意味で写真が撮りにくかった。袋から出すとほろほろと崩れてしまう。それほどやわらかく炊き込んである。一見して味が濃いのかと思ったが、とんでもない。醤油加減も甘みもほどよくて、そのままぱくぱく食べられる。さすが信州で長年愛されてきた名物だ。
 長野の鯉といえば佐久鯉が有名だが、その歴史は江戸時代、藩の政策による養殖まで遡るという。信州の鯉は千曲川やその伏流水など、冷たくて澄んだ水でじっくり育つため、身が引き締まり、適度に脂がのって、臭みもない。
 「鯉のうま煮(甘露煮)は、信州では結婚披露宴などお祝いの席に欠かせない郷土料理ですね」とお店の方。吉田兼好の『徒然草』に鯉は「やんごとなき魚」と書かれ、昔から祝儀に使われてきたという。秘伝のタレを使い、強火でじっくり煮込んだ鯉のうま煮。ご飯にもお酒にも合います。
〈下関市・㈱江戸金〉
亀の甲せんべい(缶8枚入り 756円)
 「歴史もあって、長く、みんなに愛されているお菓子です。食べたあとの缶を、おばあちゃんが裁縫道具入れにしたり、子どもが小物入れにしたり。近所のどこの家にもこの缶が1個はあったように思います」。ご担当者の話からも、亀の甲せんべいがどれだけ身近な存在だったかが伝わってくる。
 製造する江戸金の創業は文久2年(1862)。創始者の増田多左衛門さんは江戸の麹町で生まれ、幼少の頃から菓子作りを習いおぼえた。長崎でオランダやポルトガルの菓子を学び、江戸に帰る途中、兄がいた長州藩に立ち寄ったのが縁で、亀の甲せんべいを焼きはじめたという。幼名が金次郎であったことから、「江戸から来た金さん」とよばれ、屋号が「江戸金」になった。
 パリッと割って口に含むと、一転やわらかく溶けておいしい。ゴマとケシの実の風味がふわっと立ち上り、大人の味わい。油を使わずに焼き上げているそうで、なるほどさっぱりと軽く、あと味もすっきりしている。つやがあって、きれいな曲線を描き、見た目もきれいです。
亀の甲せんべい
大丸 焼ハーフ
〈須崎市・㈱けんかま〉
大丸 焼ハーフ(1本 755円)
 何とも華やかな断面をもつこの商品は、魚のすり身で茹で卵を包み込んだかまぼこ。土佐では皿鉢(さわち)料理に使われ、昔から親しまれているという。
 「高知県民は茹で卵が好きなんでしょうか、卵が中に入った物が意外に多いです。中でも大丸は有名で、高知では知らない人はいないと思います。店頭でもよく売れますし、特にお正月には欠かせない商品です」とお店の方。卵とかまぼこの取り合わせだから、素直においしい。スライスしてそのまま手軽に食べられる。切る場所によって模様のように変わる断面もおもしろい。
 もう一つ、高知県の練り製品売り場で、必ずと言っていいほど見かけるのが「すまき」だという。外側がピンク色の、直径2センチくらいの棒状の蒸し蒲鉾。子どもたちのおやつ、お父さんのおつまみ、麺類にご飯にと大活躍の商品だそうだ。まるごと高知に行ったら練り製品売り場で見つけてください。
〈由布市・㈱由布製麺〉
やせうま(125g 350円)
 やせうまは大分県全域で食べられる郷土料理だという。小麦粉を練って作った幅広の麺に、甘いきな粉をまぶして食べるおやつ。
 大分出身のご担当者お二人も、「私も食べていました。最近、自宅で作る家は減りましたが、スーパーでも販売されています」「うちのおじいちゃんも好きでした」と、エピソードを話してくださった。ふるさとの味は、ご家族の思い出とともに語られるので、聞いているとほのぼの幸せな気持ちになってくる。
 そして、このやせうま、実においしい。麺がつるつるもっちりして、上品な甘さのきな粉とよく合う。
 説明書によれば、発祥は平安の昔にまで遡るようだ。大分に八瀬(やせ)という乳母と幼君がいて、この八瀬が幼君のために作ったおやつがおいしかったので、幼君が「やせ、うまうまが欲しい」とせがんだことが「やせうま」の語源だという。大分というとだんご汁が有名ですが、これもおいしいです。
やせうま
中元千恵子
中元千恵子 旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。 『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。(朝日新聞デジタル連載記事