風土47
我が県のなつかしの味! パートⅡ
今月の取材では「郷土で愛される味は、素朴なおいしさがある」ということに気づきました。
決して派手ではないけれど、素材の味を生かして丁寧に作り続けられているものばかり。
しばらく離れて忘れてしまうこともあるけれど、やっぱり懐かしくてこれが一番と思う。
故郷そのものへの想いと似ていますね。
取材/撮影 中元千恵子(トラベルライター 日本旅行記者クラブ、日本旅のペンクラブ会員)
※ご紹介した商品は品切れしている場合があります。在庫を各アンテナショップにてお確かめください。
*記載の商品価格は、2014年4月の消費税増税後の税込み価格になっております。
〈江差町・㈱五勝手屋本舗〉
五勝手屋羊羹(103g 270円)
 道内で知らない人はいないというほど、有名な羊羹だという。
 作っているのは、かつてニシン漁で栄えた江差町にある明治3年(1870)創業の五勝手屋本舗。羊羹や最中、カステラなどを製造しているが、中でもこの丸い筒に入った羊羹は昔から大人気だという。原料は羊羹にはめずらしく金時豆を使用。食べ方も独特で、ふたを取って容器の片側から円筒形の羊羹を押し出し、付属の糸で切って食べる。
 「端に砂糖が固まった部分があるのですが、それを兄弟で取りあって食べましたね」と、北海道出身のスタッフの方が懐かしそうに話してくれた。
 五勝手屋羊羹は“一日一釜”といって、早朝から煮上げた豆を、寒天や砂糖と一日がかりで練り上げるそうだ。丹精込めて練った羊羹は口当たりがなめらかで、やさしい甘さ。金時豆の風味がふっと口に広がる。レトロなパッケージも素敵です。
五勝手屋羊羹
新潟納豆
〈新潟市・㈱高橋商店〉
新潟納豆(95g 130円)
 最近、納豆は一人分の小分けの容器に入って売られているものが多い。
 「でも、昔は大きな容器に入っていて、お母さんがかき混ぜて、家族みんなで取り分けていましたよね。そんな時代から、変わらずに愛されているのがこの高橋商店の納豆なんです」。
 そうお店の方が紹介してくれた新潟納豆は、確かに大きめの昔ながらの容器。新潟県は県域が広いので、県全体でかは不明だが、少なくとも新潟市を中心とした一帯ではとても有名な商品だという。
 おいしい。豆がしっかりとして味が濃く、醤油を少しかけて、納豆だけでも煮物のようにぱくぱくと食べられる。
 タレが付いてないのもいい。だし入りのタレが必要ないほど、豆本来の味わいがある。
 明治29年創業の高橋商店は、かつては豆腐も作っていたが、今では納豆一筋。遡ると100年くらい納豆を作り続けているという。とにかく「おいしい豆を仕入れる」のが信条だとか。納豆好きの方に、ぜひ試してみてほしい品です。
〈和歌山市・玉林園〉
グリーンソフト(1個 216円)
 昭和33年に登場して、今や和歌山名物になったという大人気の抹茶ソフト。包み紙や袋の絵柄もレトロで可愛らしい。
 抹茶の風味が効いて、甘さ控えめでおいしい。ミルクの濃厚さが前面に出てこないので、さっぱりとしてあっという間に食べられる、見た目は可愛らしいが、格調高い味だ。
 このグリーンソフトが販売されているのは、和歌市内に何軒かある“グリーンコーナー”という軽食などの店だという。ラーメンやタコ焼き、ソフトクリームなどを販売していて、高校生は放課後、ここでラーメンやグリーンソフトを食べるのが楽しみなのだとか。
 作っているのは玉林園というお茶屋さん。なんと、安政元年(1854)創業の老舗。そして、なんとグリーンソフトは、この玉林園が世界で初めて開発した抹茶入りソフトクリームなのだという。見た目は可愛らしいが、実はすごい経歴を持つ名物です。
グリーンソフト
板わかめ
〈大山町・青木商店〉
板わかめ(30g 895円)
 これ、おいしいです。袋を開けると磯の香りがふわっと立ち上り、それだけで食欲がそそられる。目の前に山陰の青い海が現れたような気分になってくる。
 板わかめは鳥取県で定番の品だという。わかめを水で洗って乾燥させたもので、手で揉んで温かいご飯にかけて食べる。おにぎりに使うことも多いとか。
 この青木商店がある大山町御来屋(みくりや)は、大山から流れる栄養豊富な水、そして日本海の荒波で、肉厚で味わいのある天然わかめが育つ。板わかめはシンプルなだけにごまかしの効かない商品で、わかめの質と職人の技術で味に差が出る。収穫しただけの生わかめは塩辛く、これをどこまで洗うかで味が決まる。職人は天候やわかめの厚さによって慎重に洗う時間を見極めるそうだ。
 確かに塩加減が絶妙。パリパリしておいしい。山育ちの私も大ファンになりました。
〈宮崎市・㈲三松ういろう本店〉
三松ういろう(380g 463円)
三松ういろう日向夏(380g 524円)
 「懐かしい」と思われる方も多いのではないだろうか。昭和30年代後半から50年代初めにかけて、空前の新婚旅行ブームに湧いた宮崎県。青島を訪れ、このういろうを食べた新婚さんが大勢いたそうだ。おいしいからぜひお土産にしたいという要望が多く、真空パックにして販売し始めたという。
 その要望も納得。このういろう、とってもおいしい。ぷるんとやわらかいのに、噛めばもっちりと弾力があり、甘さもほどよく、あと味もすっきりしている。「三松ういろう」は、原材料は国産米粉と砂糖のみ。日向夏の方も、水飴と日向夏みかんが加わっただけで、添加物などは使われていない。シンプルな素材を最大限に活用したういろうは、素朴で心が安らぐような味わいがある。
 販売開始は明治10年ころ。創始者である鈴木サトさんが最高のもち菓子を作ろうと研究を重ね、この味が生まれたという。
三松ういろう/三松ういろう日向夏
青島せんべい
今月のおまけ
〈宮崎市・お菓子の日進堂㈲〉

青島せんべい(2枚入り×6袋 540円)
 宮崎県で、どちらをご紹介しようかと迷ったのが、この青島せんべい。こちらもかつての新婚旅行はもちろん、現在もお土産に大人気の品だ。
 作っているお菓子の日進堂は昭和24年創業。昭和38年に、当時としてはめずらしかった洋酒やクリームを使った青島せんべいを創出した。まだ洋菓子になじみがなかったころなので浸透するまでに時間がかかったが、新婚旅行のハイカラなお土産として人気に火が付き、ヒット商品に成長した。
 さすが50年以上愛されるロングセラー。他の見た目がよく似た商品より、断然おいしい。ゴーフレットに見えるせんべい部分は、米粉が入ってバリッとした食べ応えのある生地。ピーナッツクリームやホワイトクリームとよく合う。「AOSIMA」の焼き型の文字も昔のままだとか。宮崎土産に選ばれる理由が分かります。
 
中元千恵子
中元千恵子 旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。 『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。(朝日新聞デジタル連載記事