風土47
~あなたの街の〝ゆかり〟を訪ねて~塩原直美の「あんな古都 こんな古都 京都物語」
2017年、京都のニュースと繋がる、あの街、あの話題
 今年最後の配信ということで、京都の今年のニュースから他府県とのゆかりを振り返ります。沢山のニュースの中で、京都府を飛び出して、広がる話題が今年も沢山ありました。今年、最初の50回目に「恐らく、今年話題になりますよ」と第一報をお伝えした話題も含め、面白いものを取り上げてみます。
日本緑茶の誕生 二人の絆

宇治田原町にある永谷宗円の生家

永谷宗円生家で頂いた緑茶は美味しかった!
 まず今年は京都府が3年連続で企画した「海の京都、森の京都、お茶の京都」の最終年、「お茶の京都」と題し、「お茶の京都博」が年間通じて様々な企画が開催されました。

 中心となったのは奈良県に近いエリアにあたる南山城の12の市町村。様々なイベントが行われ、「京都の茶」に注目と親しみがさらに湧いた一年でありました。南山城地域は、抹茶だけでなく、緑茶の故郷でもあります。我々が今、普通に急須で緑茶を飲みますが、その誕生地が宇治田原町。江戸時代に永谷宗円が発明した製法で、全国に広まっていきました。

 永谷宗円、そう皆様、ご存じの、あの永谷園です。宗円は当初、新しい製法による煎茶の販路を広げようと江戸で茶商に営業するも大苦戦。「これは!」と唯一取引して販売してくださったのが、日本橋の茶商「山本屋」の山本嘉兵衛。山本屋はこの煎茶を「天下一」と名付けて販売。すると爆発的な人気で大いに繁盛しました。その山本嘉兵衛こそ、あの山本山です。永谷園と山本山、現在、日本を代表する大手食品企業ですが、こうした深い繋がりがある、ということです。宗円が素晴らしいのは、その製法を独占しなかったこと。全国にその製法が伝わり、日本緑茶の大部分は、これによるものなのです。また大繁盛した山本屋は永谷家に感謝し、謝礼として明治初期まで毎年25両を送金したとのこと。両者とも、素晴らしい人物、カッコいいですね。宇治田原と江戸・日本橋を繋ぐ、お茶のお話しでした。

駅伝100年、国立博物館2館大盛況 上野と京都

駅伝100年記念碑 三条大橋には新旧が建つ

駅伝記念碑 上野不忍池
 さて、今年は「駅伝100年」という節目の年でした。駅伝は日本独自の競技で1917年(大正6)4月に開催されました。
「東海道駅伝徒歩競走」と言い、京都・三条大橋から上野不忍池まで、508キロを23区間で走りました。それを記念する記念碑が三条大橋のたもとと不忍池の畔に元々、建っているのですが、今年、京都の三条大橋に新たに100年を記念して追加で記念碑が建立。道行く人々の中には「へえ~」と足を止める方も。京都三条大橋と上野不忍池、皆さんもお出掛けの際、探してください。


開館以来の入場最多を記録した京都国立博物館「国宝」
 そして、今年の企画展覧会として、最大?の話題は上野・東京国立博物館の「運慶」と京都国立博物館の「国宝」でした。行かれた方も多いでしょう。「運慶」は来場者数60万439人、「国宝」は62万4500人、と両展とも60万人と突破!! こうなると待ち時間や混雑は致し方ありませんね。展示内容もすばらしく、貴重な作品が揃う機会でした。私も立場上、あちらこちらで「国宝」PRをしただけに、本当に良かったと安堵です。ありがとうございました。ちなみに来春の京都国立博物館は「池大雅」、来秋は「名刀」の企画が発表されています。また詳しくは当コラムで。上野と京都の話題2つでした。
世界の記憶 日本はこれで7件目

「朝鮮通信使」の宿泊所の一つ本能寺

淀に残る朝鮮通信使の足跡
 そして「世界の記憶」に今年、新たに登録認定されたのが「朝鮮通信使」と「上野三碑(こうずけさんぴ)」です。日本はこれで7件目となります。「朝鮮通信使」は当コラムでいつか、詳しく紹介したいとネタを集めていますが、今回はニュースエッセンスだけ。「朝鮮通信使」とは江戸時代に、朝鮮国王が徳川将軍家へ派遣した使節団のこと。その一行が通った道中の十二都道府県と韓国が協力し、今回、その関連文書333点を申請。勿論、京都も使節団の通過地区であり、その宿泊所や使節団の通訳も京都五山の高僧が任務にあたっています。宿泊所は主にお寺。本圀寺や本能寺などに泊まったそうです。そうした歴史を伝えるために京都市内のゆかりのスポットには、その駒札も建っています。例えば、淀城公園、相国寺の慈照院など。江戸時代に12回の訪問があったようですが、使節団と呼ばれるのは、その内の9回。一行のルートを始め、関係した人物など紐解いてみたいものです。

 ちなみに、今回、登録認定された、もう一つ、「上野三碑」は群馬県・高崎市。7~11世紀の古代の石碑は日本に18例、その最古級の石碑3つ、山上碑(681年)、多胡碑(711年)、金井沢碑(726年)。1300年前の東アジアの文化交流を刻む、貴重な記録とのことです。

 ちなみに立場上、PRしますと、宇治の放生院(橋寺)にある宇治橋断碑は646年以降、宇治橋が架けられた記念碑、これを最古とする説もあります。いずれにせよ、まとまって3基現存するのは、素晴らしいです。

1年のご愛読に感謝、来年も…
 その他のニュースとしては、私たちも親しみのある大丸が創業300年、京都伏見で創業しました。また今年は岐阜県・関ケ原と京都大山崎・天王山「どちらが天下分け目の決戦か?!」というネット上で投票したり、双方の街が企画してイベントも行っていました。

天下分け目の地「大山崎・天王山」

天下分け目の地「関ケ原」決戦地

福知山城 続・日本100名城に

福知山城
 あと、お城好きはご存じでしょうが、4月6日(城の日)に「続・日本100名城」が発表され、京都・福知山城(1579年、平山城、市史跡)が、その一つに選ばれました。これから「続・日本100名城」のスタンプラリーや公式ガイド本が作製される計画の様です。皆様の街の、皆様のふるさとの城はいかがでしたでしょうか? 既に「100名城」でしょうか?

 今回の「続」となったでしょうか? 来年は、その「続100名城巡り」もテーマとしてはいいかもしれませんね。

 ・・・というように京都の話題から他府県との繋がりをニュースに垣間見てみました。面白い記事はまだまだありましたが、この辺で…。

 さて、今年最後の「京都物語」一年間、ご愛読いただき、ありがとうございました。思えば、今年もあちらこちらへ出掛けました。来年も京都と繋がりのあるスポットに出没し、知的興奮の高まる、楽しい旅を続けたいと思っております。

 来年もどうぞ、よろしくお願いいたします。

 では、皆様、よいお年をお迎えくださいませ!! 感謝。

プロフィール:塩原直美(しおばらなおみ)
東京在住。京都市観光おもてなし大使・「首都圏と京都を繋ぐ観光アドバイザー」としてフリーで活動中。BS朝日「とっておきの京都」ブレーン、BS11「古地図で謎解き! にっぽん探究」京都担当、京都商工会議所講演会(東京会場)講師、朝日新聞デジタル「京都旅レシピ」コラム連載など。また中学校へ出向き修学旅行事前学習講義も行う。京都観光文化検定1級。京都市観光おもてなし大使ページ