師走、今年も終わりですね…1年は早い、どんな年でしたか? どこか、ご旅行なさいましたか? 私は立場上、京都ばかりですが、隣接の滋賀・大阪には行きました。来年は少し、関西を抜け出して、他の地域に京都とのゆかりを探し、訪ねてみようかなと企んでいます。
さて来年は、酉年、ということで今回は「京都と鳩」についてのお話し。

石清水八幡宮の本殿
今年の京都観光の大ニュースの1つが「石清水八幡宮」の建造物10棟が国宝に指定されたこと。石清水八幡宮のある八幡市(やわたし)では初の国宝ということで地元は大変、喜んでいます。
石清水八幡宮は京都市の南、京都中心部から京阪電車で約40分。八幡市駅を降りると、すぐに男山ケーブルカーがあり、それに乗り換えて3分、男山山頂駅から徒歩5分で社殿に到着します。お車ならば山頂付近に駐車場もありますが、ケーブルで旅気分を満喫することをお薦めします。また男山は急な山道ではないので、初心者でも登山は可能。季節が良いときには、往復のどちらかを歩いての森林浴も気持ちが良いですよ。

宇佐神宮の御本殿 写真提供:宇佐神宮(大分)
さて石清水八幡宮は「やわたのはちまんさん」と呼ばれています。創建は859年、現在の大分県宇佐市にある宇佐神宮のお告げを受けた行教(奈良・大安寺の僧)によって建てられました。お祀りされている神様は誉田別命(ほんだわけのみこと・応神天皇)と他、2柱です。石清水八幡宮では3柱の神を総称して八幡大神と呼んでいます。
石清水八幡宮の場所は都の裏鬼門(南西)にあたり、鬼門である比叡山延暦寺と共に都を守護してきました。清和天皇のころより源氏の氏神、武の神としても崇拝され、歴史上の武将も信仰し、寄進しています。例えば、楠木正成が必勝祈願で奉納したクスノキは樹齢700年、境内に残っています。また織田信長が寄進した金の雨どいが社殿に取り付けられ、寺宝には豊臣秀吉が奉納した釣灯籠などもあります。今回、国宝指定を受けた現在の社殿の多くは徳川家光によるものです。

石清水八幡宮楼門には阿吽の鳩
石清水八幡宮にお参りに行くと「あれ、あそこに鳩!」「あ、あれも鳩…」と気付かれるかと思います。社額の八の文字が鳩になっていたり、楼門上の蟇股には阿吽の鳩が施されていたり、今、大ブームの御朱印の八の文字も愛くるしい鳩が書かれています。お守りや授与品の中にも鳩を見つけることも出来ます。全国にある八幡宮でも、こうした鳩は見受けられ、祀られている八幡様の神の使いとして我々とを繋いでいます。それは八幡宮総本宮・宇佐神宮にお祀りされている誉田別命(ほんだわけのみこと・応神天皇)が国内を平定するときに道案内したのが「鳩」、そこからの縁なのです。その神を勧請した石清水八幡宮でも鳩があちらこちらに見られる、という訳です。

三宅八幡宮では狛鳩が鎮座

三宅八幡宮の可愛い絵馬のデザインも鳩
少しニュアンスが違うのですが、宇佐神宮、鳩と深い繋がりのある社がもう一つ。京都市左京区の三宅八幡宮です。鳥居の前に鎮座するのは狛犬ではなく「狛鳩」。三宅八幡宮の境内では、無人販売の「鳩の餌」もあり、飛んでくる鳩と和やかなひとときも楽しめます。また茶店(参拝者が多いタイミングで営業)では「鳩もち」も販売しています。当社は子供の守り神、疳の虫封じ、子供の病気平癒などの御利益で知られます。
この三宅八幡宮を創建したのは遣隋使として知られる小野妹子(おののいもこ)。聖徳太子の命令で隨に渡るのですが、その道中、筑紫(今の北九州)で病気になり、近くの宇佐神宮に祈願したところ、病が治り、隋への船旅でも数々の危難を乗り越え、無事に帰国。このご恩に報いるため、小野妹子は移り住んだ当地に宇佐神宮の神である八幡様を勧請しました。この時にも白い鳩が現れ、道案内したという話が伝わります。

護王神社

護王神社境内に立つ和気清麻呂像

宇佐神宮勅使門 写真提供:宇佐神宮(大分)
さらに鳩から少し離れますが、宇佐神宮と深くゆかりのある人物・和気清麻呂のお話を最後に。以前「足腰の神様」と「銅像」の各回で護王神社を紹介しました(2014年3月と6月)。宇佐神宮と護王神社の繋がりは、祀られている和気清麻呂(わけのきよまろ)が、宇佐神宮へ向かったことに始まります。何故、向かったか? 時の政権を思うままにしていた僧・道鏡が自ら次の天皇に就こうと企み、嘘の奏上をします。本当に道鏡が天皇に相応しいか? 否か? その真意を確認する目的のため、宇佐神宮へ和気清麻呂が派遣されました。結果的には和気清麻呂の活躍により、道鏡の野望は叶わなかったわけですが、宇佐神宮が都人(みやこびと)と古くから縁が深いことが、こうした数々の話からわかります。(護王神社は明治時代に、神護寺から現在地に移転)
宇佐神宮のある大分県は温泉地が沢山あり、どこの湯に浸かろうか? 迷うほど。海の幸、山の幸も豊かで、私は全国を旅した中でも、とても好きな県です。是非、宇佐神宮と合わせて、大分の温泉にもお出掛けください。
2016年、一年間、「京都物語」のご拝読ありがとうございました。来年も引き続き、京都とゆかりのある地域の紹介をしていきます。では、良いお年をお迎えください。