風土47
~あなたの街の〝ゆかり〟を訪ねて~塩原直美の「あんな古都 こんな古都 京都物語」
「京都カフェ〜9月」開催のご案内
 京都ファン、京都贔屓のゆるやかな集いです。お気軽にご参加ください。
 詳しいご案内は、下記のリンクからダウンロードできます。
 「京都カフェ〜9月」
松島からの復興祈念企画と京に残る「伊達家」
 9月1日は「防災の日」。東日本大震災、広島土砂災害、熊本地震と天災が相次ぐ日本に住む我々は防災への意識を高めなければいけません。自然の脅威に備える姿勢を強固に持ちつつ、その一方で少しずつ進む復興の兆しに喜びを感じますね。地元へのご旅行や地元の名産品をご購入頂くこともそうですが、この秋、復興を祈念する企画展が東京で開催されます。そうしたイベントに足をお運びいただくことも、支援になりますので是非、お出かけを。
松島からやってくる復興祈念企画展
 今秋、東北大震災の復興祈念として東京・三井記念美術館にて「松島瑞巌寺と伊達政宗展」が開催されます(9月10日~11月13日)。今回の展示の一つに震災復興祈念として秘仏・木造五大明王像(重要文化財)が出開帳を行います。この五大明王は33年に一度の秘仏で、次回は2039年なのですが、今回、特別に御開帳となります。

 …ということで、今回は宮城・松島・伊達家と東京、そして京都を繋ぐ、お話しです。

伊達家の本拠地 仙台・松島

松島・瑞巌寺本堂 写真提供:(公社)宮城県観光連盟

伊達政宗騎馬像 写真提供:(公社)宮城県観光連盟

仙台市博物館 写真提供:(公社)宮城県観光連盟
 冒頭に挙げた松島・瑞巌寺(ずいがんじ)は宮城県仙台市松島にあります。松島にある「瑞巌寺・五大堂・円通院」は伊達家ゆかりの観光スポット。中でも伊達政宗の菩提寺「瑞巌寺」の本堂は、ようやく修復工事を終え、今春から7年ぶりに拝観が再開されています。

 修復工事の最中に、あの東日本大震災が起りました。幸い、津波は本堂まで達しなかった上、修復中であったにもかかわらず震度6に耐えました。瑞巌寺には国宝の欄間彫刻、狩野派や長谷川派による障壁画があり、絢爛豪華な安土桃山文化を感じる貴重な文化財です。

 本堂を東京に運ぶわけにはいきませんが、今回、東京・三井記念館で行われる展示会には、本堂の障壁画や欄間などが目玉となっています。

 また仙台藩・伊達家と言えば仙台にある仙台城跡「青葉城」が有名です。伊達家62万石、1610年に築城された伊達家の居城は標高130mの高台にあります。徳川幕府に遠慮して、初めから天守閣はなかったそうです。現在、当時の建物は残っていませんが、石垣が歴史を物語ります。

 その城跡公園に建つのが、あの「伊達政宗の騎馬像」。歴史上の人物の銅像が各地にありますが、カッコよさとしてはNo.1ですね。この他にも城跡近くの仙台中心部にある伊達家ゆかりのスポットとして、政宗公の霊屋「瑞鳳殿」、政宗が創建した「大崎八幡宮」、政宗の武具などを所蔵する仙台市博物館などもあります。

政宗が暮らした伏見

海寶寺本堂

政宗ゆかりの名木・木斛
 一方、京都。伊達家と京都?と思い浮かばないかもしれませんが、ゆかりのスポットは幾つかあります。

 伊達政宗は戦国時代を経て、豊臣政権の世になると秀吉から土地を与えられ、1595年、伏見に屋敷を設けます。現在、桃山町正宗という住所のあたりです。伏見屋敷には重臣や妻子を住まわせ、常時1000人以上がおり、屋敷の一帯は「伊達町」とまで称されたそうです。1599年あたりまで、政宗自身も伏見で暮らし、また、その2年後に上洛した際にも、当地に住んだと言われています。その跡地に現在あるのが黄檗宗「海寶寺」(かいほうじ)。普茶料理や伊藤若冲の襖絵(現在は京都国立博物館所蔵、寺には今年、復元した作品を置く計画あり)がある寺として知られています。境内には伊達政宗が植えた木斛(もっこく)があり、その縁を今に伝えています。

 またこの伏見以外にも深草に伊達家の下屋敷があり、現在は地名として「西伊達町、東伊達町」として残っています。

伊達家から移築された建造物

浄住寺の方丈

浄住寺の方丈からの庭園

浄住寺 本堂

浄住寺 参道
 そしてもう一つ、知る人ぞ知る伊達家ゆかりの寺があります。仙台藩4代目伊達綱村(政宗が初代)が幼少期に過ごした館、武家屋敷(別名:亀千代御殿)が、京都に移築されているのです。場所は京都・西京区、浄住寺(じょうじゅうじ)の方丈として残されています。綱村は2歳で家督を継ぎますが、しばらくは家臣たちが藩政を取っていました。いわゆる伊達騒動(お家騒動)の渦中の藩主です。藩のゴタゴタ、その真相はさておき、大名茶人としての評価がある人物で、茶会記が記録として残っています。また側近が京に遊学するなど、当時の文化人との交流もあったと言われています。

 さて、この浄住寺は苔寺で有名な西芳寺の近くにあります。近年まで非公開でしたが、このところ公開。創建は古く、810年、嵯峨天皇の勅願寺として建立。1261年、葉室定嗣が中興するも、その後も度々、兵火によって荒廃。葉室家に支えられながら、宗派も変わりつつ、現在は黄檗宗寺院。本堂には釈迦牟尼仏坐像が安置されています。秋の境内は紅葉がとても美しいので是非。人もあまりおらず、穴場です。

 今回は伊達家を中心に本拠地であった仙台と松島のご紹介と、その寺宝が東京・三井記念館に今秋やってくるよ!のお知らせ、そして伊達家ゆかりの京都をお届けしました。

プロフィール:塩原直美(しおばらなおみ)
東京在住。京都市観光おもてなし大使・「首都圏と京都を繋ぐ観光アドバイザー」としてフリーで活動中。BS朝日「とっておきの京都」ブレーン、BS11「古地図で謎解き! にっぽん探究」京都担当、京都商工会議所講演会(東京会場)講師、朝日新聞デジタル「京都旅レシピ」コラム連載など。また中学校へ出向き修学旅行事前学習講義も行う。京都観光文化検定1級。京都市観光おもてなし大使ページ