風土47
~あなたの街の〝ゆかり〟を訪ねて~塩原直美の「あんな古都  こんな古都  京都物語」
〜スポーツの祭典に胸躍る春、到来〜(2013年3月1日)

写真:野球博物館

 皆様、こんにちは。いよいよ2日から野球の世界一を決めるワールドベースボールクラシックが開幕。前回、前々回の熱戦を思い出す方もおられることでしょう。実は私、野球好きで、とりわけイチロー選手を誰よりも尊敬してやまないファンの一人です。過去2回の同大会、エキサイトシートや内野通し券で球場観戦しました。日本の会場となっている東京ドームの21番ゲート右側には「野球博物館」があります。日本の野球史を知ることができ、企画展なども開催されています。野球に限らず、スポーツの素晴らしさは言うに及ばず。今回はスポーツのお話を…。

世界遺産を駆け抜ける「第2回京都マラソン」

写真:京都マラソン

 つい先日、東京では「東京マラソン」が行われました。天気は晴れ、気温・湿度ともにまずますのコンディション。風が強かったのが気になりましたが総勢36,000人のランナー達の完走率は96.2%。沿道の応援は1,735,000人と寒空の下、「東京がひとつになった」ようです。コースは都庁をスタート、皇居~東京タワー~銀座・日本橋~浅草~ビックサイトと東京名所がズラリ。
そして今年2回目となる「京都マラソン」は10日に実施。東京のコースに負けず劣らず、世界遺産も含め京都ならではの名所旧跡となっています。スタートは京都スポーツのメッカ「西京極総合運動公園」。マラソンゲート入口には有森裕子・高橋尚子・野口みずき3選手の足形プレートがあり、ランナー達の気分を盛りあげます。運動場を後にしたランナーたちは、梅宮大社~天龍寺~広沢池~仁和寺~龍安寺~平野神社~今宮神社~上賀茂神社~宝ヶ池~賀茂川(鴨川)~京都大学~百万遍~平安神宮前でフィニッシュ!これだけの有名社寺の前や脇を駆け抜けるコースも魅力的です。お近くの皆様は是非、沿道での応援を。

知る人ぞ知る?スポーツの記念碑を発見!

写真:駅伝の碑

写真:あるけあるけの碑

写真:一蹴の碑

「走る」にちなんで、京都の三条大橋のたもとに建つ「駅伝の碑」をご存じでしょうか。
駅伝は我が国特有の競技と言われていますが、それならば、世界初の駅伝は、大正6年(1917)遷都50周年記念大博覧会で行われた「東海道駅伝徒歩競走」です。京都三条大橋をスタートして上野・不忍池まで3日間かけて走りました。これを記念する碑が、京都でも交通量の多い三条大橋のたもとに建っているのです。

「走る」のはちょっと…でも健康のために歩いているの!ならば「あるけあるけの碑」が親しみやすいでしょうか。
こちらの碑は東京のスポーツのメッカとも言える明治神宮外苑の絵画館前の道路脇にひっそりとあります。この記念碑は日本ウォーキング協会がウォーキング運動発足40周年を記念して建てた比較的新しいもの。休日になると外苑には「歩け歩け」「走れ走れ」の人々、そして草野球やテニス、ゴルフ、サイクリング、フットサルなどで賑わいます。ラグビーの試合も時々行われています。
ちなみに京都・下鴨神社には関西ラグビーゆかりの「一蹴の碑」がひっそりと建っています。慶応義塾生の指導の元、旧制三高の学生らが、この下鴨神社の糺の森辺りで初めてラグビーボールを蹴りました。この碑に気が付く方はほとんどいませんが…
是非、下鴨神社参拝の折に見つけてください。

蹴鞠の神に願いを込めて…球運を授かろう

写真:蹴鞠の碑

写真:白峯神社

“蹴る”と言えば…サッカー。人気も相変わらずです。それは歴史の長い「蹴鞠」に始まります。「蹴鞠」は相手が受け取りやすく、打ちやすい配球をする、ある意味で思いやりのある勝敗のない雅やかな球技。京都にある白峯神宮境内の地主社には鞠の守護神・精大明神が祀られています。サッカーの神様として近年有名になり、プロサッカー選手もお参りに訪れています。境内には「蹴鞠の碑」があり、お参りの後、この碑の“なで鞠”を1度回すと球運が授かるご利益が。境内では蹴鞠保存会の方々が時々練習をなさっており、よく見に行きました。写真は練習風景なので軽装ですが、本番は現代とは全く違う平安衣装、烏帽子や靴なので、難しい技術が必要なのです。4月14日と7月7日には蹴鞠が奉納されます。保存会の皆様の練習の成果、高い技術をご覧ください。

皆様の街の“スポーツのゆかり”探してみてください

写真:日本スキー発祥記念館(上越市)

最後にウインタースポーツの歴史を一つ。以前、比叡山にはスキー場もあったようですが、現在は京都市内からの近場では「びわ湖バレイ」になるのでしょうか。私事ですが、父の実家が新潟だったため幼い頃からスキーを履いて親戚に預けられ小学生の頃は雪山籠りしていたので、スキーは得意です。その新潟にスキーのゆかりの地があります。日本に初めてスキーが伝わったのは1911年(明治44)のこと。当時のオーストリア・ハンガリー帝国の軍人レルヒ少佐が上越市高田で大日本帝国陸軍の将校たちスキーを指導し伝えられました。上越市には「日本スキー発祥記念館」もあり、レルヒ少佐の遺品や当時の資料などが展示されています。今年は積雪も多く、住民の方々は大変ですが、スキー・スノボはゴールデンウイーク辺りまで楽しめそうですね。
今回は野球にマラソンにサッカー、そしてスキーとスポーツ史を少しご紹介いたしました。皆様の地域にもスポーツの「ゆかり」を是非、探してみてください。

アクセス・問い合わせ ※市バス=京都市営バス

  • 野球博物館 JR「水道橋」駅または東京メトロ「後楽園」駅下車徒歩5分
    電話03-3811-3600
  • 西京極総合運動公園 市バス「西京極総合運動公園前」下車徒歩5分
    電話075-315-4561
  • 駅伝の碑 市バス「糺の森」下車徒歩3分 河合神社境内の裏、糺の森の中
  • あるけあるけの碑 JR「信濃町」駅下車徒歩5分 絵画館前の野球場側
  • 白峯神宮 市バス「堀川今出川」下車すぐ 電話075-441-3810
  • 日本スキー発祥記念館(上越市)JR高田駅下車、車で10分 電話025-523-3766
プロフィール:塩原直美(しおばらなおみ)
東京生まれ、國學院大學卒業後、スポーツ新聞社を経て京都市へ転居。東京に戻り京都市の「京都館」勤務、2012年春退職。現在、首都圏と京都を繋ぐ観光アドバイザーとして活動中。BS朝日「京都1200年の旅」、「京都検定」講師。京都観光文化検定1級取得。