風土47
~あなたの街の〝ゆかり〟を訪ねて~塩原直美の「あんな古都 こんな古都 京都物語」
蓮如の足跡 本願寺の歴史

西本願寺・御影堂と大イチョウ
 ここ一年前ぐらい前から、修学旅行指導の見直しなどもあり、実は京都の「世界遺産」の17カ所を“丁寧にじっくりと初心に戻って”改めて訪ね直し始めています。

 京都にだんだんと詳しくなるにつれ、観光客が少ない穴場的なスポットを沢山知っているとか、混雑を回避し、そうした場所を効率よく回ることが「通」なような気分でいたのではないか?と少し自己反省をしています。中でも清水寺は、もう拝観券が20枚以上あり、それでも「もう一度」と先日も参拝しました。

 再度の訪問で毎回、痛感するのは世界遺産にもなると「もう、終わりがないこと」です。行く度に新発見や感動、遭遇があり、そこから学ぶべきことが、まだまだあり「これで(来て、観たから)、もういいや」とは全く思えないからです。「奥が深い」という言葉の通り、まだまだ信仰的にも観光的にも文化財的にも学ぶことが溢れています。生涯かけても「終わりがない」と気付かされるのです。

蓮如と滋賀・堅田

滋賀堅田にある蓮如ゆかりの本福寺

本福寺・本堂

本福寺にある蓮如堂(外観)

蓮如堂(内部)

本福寺に残る蓮如遺愛の樹
 そんな世界遺産の一つ「西本願寺」のゆかりの人物と場所を今回はご紹介します。

 西本願寺は正式には「本願寺」。親鸞を開祖とする浄土真宗本願寺派本山。現在の門主で25代を数えます。本願寺の歴史は激動で、その全てをご紹介はできないですが、苦難の歴史の中で、強固な教団にしたのが8世門主・蓮如(れんにょ・1415~1499年)です。お名前は聞いたことがあるでしょうか。

 仏教界も歴史上、幾度も勢力争いがありました。時の権力者や朝廷からの直接的な宗教弾圧だけでなく、教団が権力者に訴えて、有力な僧侶を都から排除するということも多々ありました。蓮如もその一人です。35歳の時、宗教弾圧に遭い、都を追われ、金森・堅田・大津などを点々としながら、その地、その地で布教活動をした足跡が、今もあちらこちらに残っています。そして越前・吉崎を本拠地にして北陸で布教。その後、河内、京都山科本願寺、大坂石山本願寺と経過。教団は急速に発展し、全国へ拡大していきました。

 都から追われたにもかかわらず蓮如への帰依、門徒の信仰心は弱まるどころか、より強固になって、全国的教団への成長し、都の近くまで戻ってきたと言えます。蓮如のすぐ後の時代に大坂石山本願寺から現在地(京都)へと寺地(本拠地)を移します。

 都を追われ身を寄せた場所の一つである滋賀県・堅田(かたた)を今回、訪ねてみました。琵琶湖畔にある堅田は中世から栄え、湖上に関する商売の独占権を持った商人(堅田衆)の町。観光名所としては「近江八景の一つ」浮御堂があることでも知られています。

 その堅田には蓮如ゆかりの本福寺があり、境内には蓮如堂・蓮如遺愛の樹もありました。

 また直ぐ近くには蓮如に帰依し、自ら命を捧げ、蓮如の苦難を救った「堅田源兵衛」親子の悲話が伝わる光徳寺もありました。

蓮如と京都

蓮如上人誕生の地に建つ碑

史跡・山科本願寺跡

寺内町を形成していた山科本願寺跡の一部は公園に
 京都には蓮如ゆかりのスポットが沢山あります。生まれたのは現在の知恩院あたり、そこには碑が建っています。

 そして晩年、1481年、本願寺を山科で再興します。山科には史跡に指定されている跡地(山科本願寺南殿跡)やその周辺にある別院、巨大な寺内町を形成していたことがわかる土塁が残る公園などが点在しています。

 銅像や像を安置している寺もあります。ちなみに、その勢力を恐れられ、山科本願寺は焼き討ちに遭って、ほぼ全焼しています。その後、蓮如が残した御堂・大坂石山(現在の大阪城あたり)に門徒は拠点を移しています。蓮如が没したのは山科。御廟もあり、静かに眠っています。

 現在の西本願寺は、蓮如没後の時代に拠点となったので、直接、蓮如に関わる「ゆかり」を感じることはないのですが、蓮如のみなぎる力によって、教団が息を吹き返し、再興を果たした訳です。蓮如によって急速に強固になっていった経過を知ることで、西本願寺へ思いも変わります。今の西本願寺は信仰だけでなく、文化財的に非常に価値あり、立派で、「そりゃ、世界遺産だよね」と納得してしまいます。書院や飛雲閣のエリアはなかなか公開いたしませんが、チャンスがあれば、是非、拝観なさってください。
 「もう一度、いや何度でも」…それが“世界遺産”ですね。


山科にある蓮如上人廟所

山科の寺に建つ蓮如像
プロフィール:塩原直美(しおばらなおみ)
東京在住。京都市観光おもてなし大使・「首都圏と京都を繋ぐ観光アドバイザー」としてフリーで活動中。BS朝日「とっておきの京都」ブレーン、BS11「古地図で謎解き! にっぽん探究」京都担当、京都商工会議所講演会(東京会場)講師、朝日新聞デジタル「京都旅レシピ」コラム連載など。また中学校へ出向き修学旅行事前学習講義も行う。京都観光文化検定1級。京都市観光おもてなし大使ページ