風土47
~あなたの街の〝ゆかり〟を訪ねて~塩原直美の「あんな古都 こんな古都 京都物語」
明治の京都を体感 犬山・明治村

琵琶湖疏水施設 南禅寺境内にある水路閣
 今年の京都は二条城を中心に「大政奉還150年」という節目で大いに盛り上がりました。

 来年は、その歴史の流れで当然ですが「明治維新150年」。それはそうですね。さらに年明けからはNHK大河ドラマで西郷隆盛「せごどん」も始まります。…ということで明治が注目されるので、今回は、明治時代の京都ゆかりのスポットを紹介します。

京都で日本初の電車が開業運行

琵琶湖疏水 設計技師・田邊朔郎の銅像

琵琶湖疏水記念館
 何と言っても明治の京都、それは「琵琶湖疏水」に始まります。皆様も南禅寺の境内にある赤煉瓦の施設「水路閣」をよく御存じだと思います。サスペンスドラマのロケなどでもよく登場します。これからの時期は赤レンガと紅葉が風情を醸し出し、人気のスポットの一つです。この「水路閣」は今も現役、琵琶湖の水を京都に運ぶ水路となっています。

 琵琶湖疏水の工事は明治18年(1885年)から始まりました。延長開削はありますが、一先ず、滋賀県大津から鴨川まで、竣工されたのは明治23年(1890年)。疏水工事の責任者は、田邊朔郎という人物です。琵琶湖疏水のインクラインの脇には彼の功績をたたえる銅像も建っています。

 琵琶湖疏水記念館には工事の経緯、疏水の仕組みなどが解説展示されていて、なかなか他にはない面白い施設です(入館無料・月曜休み)。


京都駅前「電気鉄道事業発祥ノ地」記念碑

平安神宮

市電車両野外展示(平安神宮神苑)
 琵琶湖疏水の目的は物資運搬、灌漑用水、上下水道など多目的ですが、中でも水力発電に注目。この我が国初の水力発電によって、我が国初の市街電車(路面電車)が明治28年(1895年)に開業運行となります。現在の京都駅の北東あたりから伏見までの約6・7㌔、の伏見線。現在、その起終点双方に記念碑が建っています。京都駅前の記念碑は「電気鉄道事業発祥之地」と刻まれ、当時の電車の様子も描かれています(日本初の電車走行は博覧会会場で既に上野で走っていたが、電車営業、路面電車としては京都が初)。

 この京都市電、その後、路線も多く配線され、長く市民の足となりましたが、昭和36年(1961年)残念ながら廃線、現在、京都市電はありません。当初、走った車両が平安神宮の神苑に野外展示されています。平安神宮もまた明治の京都の一つの象徴の社、なぜなら平安遷都1100年を記念し、明治28年(1895年)創建されたからです。市電開業と同年ゆえ、京都市電を展示するには相応しい場所という訳です(当初の車両に限らないものであれば、市内の幾つかに展示されています)。


明治村 京都市電乗り場と市電

明治村 走る京都市電
 京都では「走る京都市電」を見ることも乗ることも出来ませんが、実は、他の街で車両は現役で走っています。広島市電と伊予電鉄、そして愛知県犬山市にある明治村です。
 明治村で走っている車両は、明治43年~44年にかけて製造された大型の車両とのこと。N58号、N115号と案内表記がありました。今も、もし京都の街を走っていたら、雰囲気も交通事情も違うのだろうな…と時代の流れで仕方がないとはいえ、少々寂しさも。でも、こうして元気に走る京都市電を目の前に、感動、感激した私でありました。

明治村はプチ京都?! 教会や派出所

明治村 聖ヨハネ教会堂

明治村 聖ザビエル天主堂

明治村 茶室「亦楽庵」

明治村 京都七条巡査派出所
 この京都市電だけでなく、明治村には、京都から移築された貴重な建物が、沢山ありました。まず重要文化財の指定を受けている「聖ヨハネ教会堂」。

 これは素晴らしい建物、左右の尖塔がステキでした。下京区河原町通五条にあった教会で明治40年(1907年)の建造物、昭和39年(1964年)に移築されました。明治村には沢山の建物はありますが、一番、堂々としていたように見え、何だか自分のことのように嬉しかったです。そして、もう一つ教会が京都から移築されていました。それは「聖ザビエル天主堂」。

 こちらは外観がシンプルでしたが、内陣には圧倒されました、まさに「ザ・教会」! こんなに美しい配置のステンドグラスもこれまでに見たことがなく、天井や柱壁のアーチもステキでした。この教会は中京区河原町三条からの移築(確か今も、その場所に教会があるような…)。明治23年(1890年)の建造とのこと、登録有形文化財指定です。

 そして、教会以外にも酒屋・京都中井酒造、茶室・「亦楽庵」、宮津裁判所法廷などもありました。

 なかでも面白かったのは「京都七条巡査派出所」。明治45年(1912年)の建物で、当時は「警察官」ではなかったようで「巡査」と呼ばれていた経緯を物語っています。派出所の中にも入れ、何やら奇妙な気分ですが楽しい建物です。もともとは京都駅の近くの下京区七条通、西本願寺と龍谷大学の入口角にあったもの。化粧煉瓦を張り上げた洋風でオシャレな派出所です。これも登録有形文化財。機能性はさておき、今、京都の街にあってもなかなかステキですね。

…と言う訳で犬山市の明治村、以前から京都の建物があることを知っていたので、行きたいな~とは思っていたのですが、なかなか実行できずでしたが、今回、行って「明治」を体感してきました。建造物は見てきたので、元々あった京都の「その場所」に行ってみよう、そこは、もうビルなのかな? ゆかりは何も残っていないのかな? と私の新たな宿題です。皆様も是非、紅葉の映える水路閣、見応えのある琵琶湖疏水記念館、そして明治村へ、この秋、お出かけしてください。
プロフィール:塩原直美(しおばらなおみ)
東京在住。京都市観光おもてなし大使・「首都圏と京都を繋ぐ観光アドバイザー」としてフリーで活動中。BS朝日「とっておきの京都」ブレーン、BS11「古地図で謎解き! にっぽん探究」京都担当、京都商工会議所講演会(東京会場)講師、朝日新聞デジタル「京都旅レシピ」コラム連載など。また中学校へ出向き修学旅行事前学習講義も行う。京都観光文化検定1級。京都市観光おもてなし大使ページ