風土47
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ホルモン鍋専門店(곱창전골 전문점)

 この前、ソウルに住む友人から、年が終わる前に一緒に行ってみたいお店があるんだけれどと呼び出しがありました。

 友人の家から歩いて20分ほどの距離にあるホルモン鍋専門店がそのお店です。ホルモンは、臭みを取るために小麦粉と塩で何度も丁寧に洗わなければならないなど、きれいで新鮮な材料を扱う能力が必要なため、専門に扱うお店が大半です。

 お店の外観は古びていて懐かしさが伝わりますが、客を迎えるご主人からもお店と同じ雰囲気を感じ取れます。親しみのある言葉で声をかけてくれたので席に座る前に心が和みました。

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どことなく懐かしさを覚える外観 / いつも混んでいるという店内

 このお店に15年間通っているという友人によると、この辺りではなかなか有名なお店で、いつもお客さんで混み合っているのに、キッチンの手伝いをするおばさんとご主人だけでこなしているそうです。友人が高校生の時は、ご主人が一人だけで切り盛りしていたので、忙しそうな時は料理を待つ合間に洗い物とかをよく手伝ったそうです。

 とても心地良いお店なので長居するお客さんが大半です。この日も満席でしたが、ちょうど帰るお客さんがいたのですぐに席に座ることができました。

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店内に掲げられたメニュー / お鍋が溢れんばかりにホルモンが入っています

 私たちは、ここの定番メニューであるホルモン鍋を2人前注文しました(1人前が11,000ウォン)。

 ホルモン鍋は、牛または豚のホルモン(小腸)と野菜を煮込む鍋料理ですが、粉唐辛子がたっぷりと入り、ホルモン独特の味と食感とが良くマッチして、ご飯のおかずとしてだけでなく冬の酒の肴にも絶好です。

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美味しそうな匂いが漂い、そろそろですね / 食べやすいようにはさみで切ってくれます

 ほどなく、ご主人の人柄を示すように汁が溢れんばかりにホルモンがたっぷりと入った大きい鍋をテーブルのガス台の上に乗せてくれました。スープが沸騰しはじめてホルモンにある程度火が通ったら、忙しい最中でもタイミング良くご主人がはさみを持って現れ、食べやすく切ってくれたり、おかずを補充したりしてくれます。

 味の秘訣について聞いてみたところ、隠すまでもないと親切に教えてくれました。まず材料には新鮮で良質のホルモンを使用すること、そしてエゴマの葉、唐辛子、おろしニンニクをたっぷり入れてホルモン特有の臭みを消すこと、スープに米のとぎ汁を使うことでホルモンから出る脂肪分と調和してしつこさがなくなり深い味になること、豆モヤシ、大根、ネギ、タマネギ、ニラを入れて味を豊かにすること、最後にホルモン鍋は辛くないと物足りなさを感じるので粉唐辛子をたっぷりと入れること、などなど丁寧に説明してくれました。

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おかずは、新鮮なキュウリとお味噌やキムチ / タマネギの酢醤油漬け
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ニラの和え物 / わかめスープも付きます

 ご主人が説明している間にホルモン鍋が美味しそうな色に煮えてきました。ご主人の言葉通り、ホルモンの臭みが全くなく、粉唐辛子がたくさん入った気持ちよい辛さで、ホルモンから出るまろやかなダシととても合っていておいしかったです。ホルモンも程よくシコシコした食感で上品な味でした。

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煮えたら小どんぶりに取っていただきます / 締めはこれを入れて雑炊にします

 私がこのお店でもっとも気に入ったのは、粉唐辛子、砂糖、酢、ゴマ油などで和えたニラの和え物とホルモンを一緒にいただくという食べ方です。口の中にニラの香りと酢の甘酸っぱさが広がり、まるでホルモンとサラダを一緒に食べているようでいくらでもいただけそうでした。

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お客さんと談笑するご主人 / 確かに見事な赤い鼻

 お店が一段落がすると、ご主人はお客さんのそばに座って酒を酌み交わしながら会話を楽しみ始めました。本当に人と酒が好きそうなご主人で、写真の撮影をお願いしたら自慢の赤い鼻がよく写るように注文されてしまいました。

 人柄の良いご主人は、ホルモンの焼ける音を雨の音と勘違いして、帰ろうとする私だちに傘を貸そうとしてみんなを笑わせていました。

 年の暮れに心も体も温めてくれるお店を紹介してくれた友人に感謝! それと何か大切なものを見つけたような気がしました。

 ご主人にとって来年も元気で楽しい一年になることをお祈りしています。

  • 金昭英(キム・ソヨン)1979年江原道江陵市生まれ
    東京の語学スクールで日本語を学び、現在は水原市で日本語通訳として働いている。