風土47
センサムギョプサル(생삼겹살)

 インドネシアを旅行中、スマトラ島でたまたま出会った日本人の観光客から、韓国人は海外旅行にコチュジャンを持って行くそうですが本当ですかと聞かれました。日本人が海外旅行に醤油を持って行くことが韓国人にとって興味深いのと一緒だなと思いました。
 本当のところはキムチを持って出かけたいのですが、匂いと包装の難しさのため、代わりにチューブ入りのコチュジャンを持参します。外国の料理にコチュジャンを掛けると少しだけ韓国の味を感じることができますので…

 しかしながら、韓国人が海外でもっとも食べたい韓国料理の代表は三枚肉(サムギョプサル)です。良く焼いた三枚肉をキムチと一緒に食べる…考えただけでも幸せな気分になります。私もインドネシアを旅行中に一番食べたかったのはやはり三枚肉です。

 ということで、今回は三枚肉を紹介します。
 私が通っているスポーツセンターの近くに生(冷凍ではないという意味)三枚肉の専門店があります。
 水泳が終わってバス停で家に帰るバスを待っている時、このお店から漂ってくる匂いは私の空いたお腹をいつも刺激しました。それに加えて、繁華街でもないのにいつも人であふれていることから、間違いなくおいしいに違いないと思い、今回おじゃましました。


賑わう店内 / パワフルなオーナー

 店内はとても庶民的な雰囲気で、ハングル文字がモチーフの壁紙と木に書いた看板のようなメーニュやテーブル上の懐かしい釜蓋が心地よさを感じさせます。
 お客さんもほとんどが常連のようで、元気で愉快なオーナーのおばさんとの会話に親しみを感じました。あるお客さんはその日ビリヤードのゲームに勝ったので、と言いながら大学生アルバイトの人にチップを置いて行きました。


とても大きな釜蓋 / 肉や野菜を手早くのせてくれます

 私たちは三枚肉を2人前頼みました。お値段は、一人前11,000ウォンです。
 ほどなくテーブル中央に置かれている大きな釜蓋(直径が60cm位)の上に、厚切の三枚肉と豆腐、キノコ(エリンギ)、タマネギ、キムチ、モヤシのナムルを並べてくれました。これが間違いなくおいしいことは、匂いと見た目だけですぐに分かりました。


おかずと薬味がいろいろ / 卵スープもつきます

 釜蓋は厚いので肉が焦げにくく、斜面になっている釜蓋から流れ落ちる油で焼く他の材料もとてもおいしかったです。中でも酸っぱくなったキムチを豚の油で焼くと旨味が出て酸味もまろやかになります。


美味しそうに焼けていきます / 食べごろに焼けた三枚肉

 韓国料理では酸っぱくなったキムチを良く使います。2、3年経ったキムチを使うのを自慢している店もあるくらいです。
 この店のキムチもただ酸っぱいだけではなく味に深みがありました。お店の人にどれくらい古いのかを聞いたところ、性能の良いキムチ専用冷蔵庫で熟成させたものだと正直に答えてくれました。


エゴマの葉に包んで食べます / キノコもキムチと一緒に

 このキムチとモヤシのナムルを肉と一緒にエゴマの葉で包んで食べるのが私の好みですが、レタスに肉とスライスした焼きニンニクとみそ、お好みで焼きタマネギやキノコを入れて食べたりします。
 三枚肉は脂肪分がとても多いのですが、釜蓋で焼くと余計な油は落ちますし、野菜をたくさん食べるので、ヘルシーな食べ物といえます。また、このお店で使っている豚のエサには漢方薬膳を加えているので、肉は柔らかく淡白で脂身はシコシコしています。

 肉を食べ終わったら、釜蓋の上でご飯、ゴマ油、刻みノリ、キムチを一緒に入れて混ぜ、焦げ目が少しつくまで炒めます。要するにキムチチャーハンなのですが、ノリに包んで食べるのでキムチの味よりもノリの香りが口の中に広がり、続いてキムチチャーハンの味が徐々にしてきます。焼きながら食べるので最後まで暖かく食べられます。


釜蓋の上で作るチャーハン / ノリで巻いて食べます

 お店は開店して7年、あちこちのブログで紹介されるようになり、知名度が上がるのはありがたいことですが、これまでの常連さんが気兼ねするのではないかと少し気になるとお店のオーナー。三枚肉で焼酎を一杯というのが韓国では庶民的なお酒の飲み方でしたが、最近、豚インフルエンザなどの影響で豚肉の値段が上がり、以前に比べると倍近くなってとても残念とも言っていました。
 この店はまわりの店より少し高いのにもかかわらず、いつも混み合っている理由がわかりました。私もぜひこの店の常連になりたいと思います。


  ◎ハングル単語メモ

  • 생 삼겹살(セン サムギョプサル):生の三枚肉
  • 솥뚜껑(ソットゥコン):釜蓋
  • 단골 손님(ダンゴル ソンニム):常連客
  • 해외 여행(ヘウェ ヨヘン):海外旅行
  • 서민적(ソミンジョック):庶民的

◆今月のおまけ写真
 インドネシアのPadang市内で見かけた「Opelet」です。
 バスの代わりにこの小さいOpeletが市内の隅々まで走り回っています。ルートは決まっていますが、バス停はなく、ルートの中ならどこでも乗ったり降りたりできるのでとても便利です。
 料金も適当でお客が自分で距離を考えて計算して払います。面白いのはPadangのOpeletは他の地域と違って、外見も中身もとてもおしゃれなので、私は特に用がなくても良く乗りました。夜はライトアップされるので雰囲気もアップします。

  • 金昭英(キム・ソヨン)1979年江原道江陵市生まれ
    東京の語学スクールで日本語を学び、現在は水原市で日本語通訳として働いている。