風土47
 
韓国の刺身(한국의 회)


 今月は韓国のお刺身を紹介しましょう。刺身は韓国語で「フェ(회)」と呼びますが、日本語の「サシミ」も大半のお店で通用します。しかし、同じお刺身といっても韓国と日本ではかなり違うので、日本へ留学して初めてお刺身を食べた時、少し物足りなさを感じたことを思い出しました。


今回注文したお刺身の盛り合わせ。白身魚オンリーです。

 日本では、魚それぞれの味を引き出すために、一、二日熟成させたり、酢で締めたり、火を通すなどの工夫があります。

 一方、韓国ではとにかく新鮮であることが求められます。魚の味よりもどちらかというとコリコリとした食感を重視するので、生きている魚を食べる直前に刺身にするのです。

 そのような理由で、日本では人気があるマグロや青魚よりも、身の締まっている白身魚(タイ、ヒラメ、スズキ、メバルなど)を好んで食べます。お刺身に使うネタは日本と比べてやや範囲が狭いといったところでしょうか。


 季節によって次のようなネタが使われます。

 春:マダイ、サワラ、メバル、メイタガレイ、アイナメ、サヨリ、イカ、カニ

 夏:スズキ、イシダイ、ニベ、アユ、ウナギ、アワビ、ホヤ、シロイカ

 秋:コノシロ、タチウオ、サバ、カワハギ、アユ、イセエビ、イカ、イイダコ

 冬:フグ、ブリ、タイ、ウツボ、ボラ、タラ、ズワイガニ、カキ、ナマコ、イガイ


 お刺身の食べ方自体もかなり違っていて、韓国式ではお味噌(刻みニンニクとゴマ油を混ぜる)と酢コチュジャンをつけ、サンチュやエゴマの葉に包んでニンニクのスライスを入れて食べるのが一般的です。近年は日本の影響で、ワサビを添えて食べることも広まっています。


酢コチュジャンにワサビを入れる食べ方も定着しました

 韓国のお刺身専門店での注文方法とお値段は、魚一匹を丸ごと捌いてもらう場合は、魚の大きさによって、小(2〜3人前)中(3〜4人前)大(4〜6人前)の中から選びます。

 お値段は魚の種類やその時期の魚獲量によって多少変動しますが、70,000ウォンから120,000ウォン前後となります。

 お刺身盛り合わせの場合は、お店によって値段も内容も少し違いますが、私が良く行くお店の場合は、小が70,000ウォン、中が80,000ウォン、大が90,000ウォンです。ネタは一般的な魚を中心に3、4点といったところです。


店内に掲げられたメニュー / 店内のようす

 もうひとつ欠かせない楽しみは、お刺身を頼むと20種からお店によっては30種類以上もの突きだしが出ることです。イイダコやエビ、貝類、チヂミ、テンプラ、サラダなど盛り沢山です(海鮮物以外はお代わりも自由です)。

 私の母はお刺身を食べられませんので、家族でお刺身を食べに行く時には突きだしがおいしくて数が多いというのが重要なポイントとなります。今回お邪魔した実家近くのお店も、お刺身はもちろん、突きだしの味と量でも有名な刺身専門店です。


お刺身を注文するとテーブルの上にたくさんの突きだしが並びます

 この日の刺身盛り合わせはヒラメやスズキなどで、冷やした陶板の上に載せてありますので鮮度が長持ちします。父は韓国式の流儀で食べるのですが、私は日本の生活を体験してからは醤油とワサビで食べる方が好きになりました。





日によって変わりますが、突きだしの一部を写真でご紹介します

 お刺身を食べた後は、魚のあらに春菊やキノコ、大根などを加えて塩と粉唐辛子で味付けをした鍋が出てきます。お好みでご飯やラーメンを追加します(韓国では鍋用にインスタントラーメンの麺だけを販売しています)。味付けはやや辛めですが、高級魚ならではの贅沢な味だと思います。


魚のあらを使った鍋にインスタントラーメンの麺を入れて食べるのが好きなんです…

 最後にデザートとして季節の果物などが出ます。お値段がやや高いように感じるかも知れませんが、ここまでのすべてがお刺身を頼むと付いてくるので、人数で割ると十分にお得感があると思います。

 魚本来の味を楽しむ日本のお刺身と、お刺身以外にも楽しみ満載の韓国式の両方とも私は大好きです。

 皆さんも韓国へいらっしゃったら韓国のお刺身をぜひ試して見てください。


  ◎ハングル単語メモ

  • 회(フェ):サシミ
  • 생선(センソン):サカナ
  • 광어(グァンオ):ヒラメ
  • 도미(ドミ):タイ
  • 농어(ノンウォ):スズキ
  • 우럭(ウロク):メバル
  • 金昭英(キム・ソヨン)1979年江原道江陵市生まれ
    東京の語学スクールで日本語を学び、現在は水原市で日本語通訳として働いている。