風土47
 


 先日、ソウルの鐘路で友達との食事会があり、待ち合わせの店に向かっていたところ、その途中にあるゴンピョンドンコムジャンオと言うヌタウナギ(沼田鰻)専門店の前に長い人の列ができているのを見ました。並ぶことが苦手な韓国人が雨の中しかも外で待つのは珍しいことですから、間違いなくおいしい店なのだと思いました。


ヌタウナギ専門店の店頭/入口の横でヌタウナギの素焼きをしている

 食事会の席でもその店の事が頭から離れず、結局2次会をヌタウナギの店にすることにしました。外で30分程待ってようやく店の中に座ることができましたが、店の入口横でヌタウナギの素焼きをしているようすが見えるのであまり退屈しませんでした。その代り素焼きの音と匂いで口の中に唾液が次から次へとわき出して来ましたが…


お客さんでぎっしりの店内。壁面の映画ポスターが良い感じを出している

 インテリアに気を使っているとは思えない印象の外見とは違い、壁には60〜70年代の古い映画ポスターや軍服等を飾っていて、結構凝った内装が意外でした。狭い店にお客さんがぎっしりいてとてもにぎやかな雰囲気とぴったりでした。


店頭のメニュー看板/テーブルに並べられた突きだし

 こちらの看板メニューであるヌタウナギ焼き一皿(1万ウォン)を頼んでみました。白キムチ、大根の酢づけ、エゴマの葉、サンチュ、ワカメスープ、ニンニクスライス、玉ねぎクスライス、お味噌、コチュジャンのタレなどが付きだしででました。しばらくすると、唐辛子タレで味付けをしたヌタウナギがテーブル中央の金網の上にのせられます。すでに素焼きしてあるので、テーブルではもう少し焼いたり冷めないよう保温するだけです。



炭火です/ヌタウナギとトックを軽く焼きます

 普通は大根の酢づけまたはエゴマの葉とサンチュに包み、お味噌とニンニクスライスをのせて食べたりしますが、辛味を抜いた玉ねぎスライスにコチュジャンたれをつけてヌタウナギと一緒に食べるのがこの店の特徴らしく、従業員が食べ方を親切に教えてくれました。こういう食べ方は私も初めてでしたが、タレの辛さと玉ねぎの甘みと香りがとても合っておいしかったです。


これで一皿分/店おすすめの食べかた

 何より炭で焼いたので、魚臭さはあまり感じられませんでした。やや辛いですが塩辛くなくちょうど良い味付けだと思いました。身の方もシコシコしていました。このコラムを書き始めてから改めて気づいたのは韓国料理にトック(おもち)がたくさん使われることでした。しかも、その時その時ちゃんと違う味を出しながら料理のそれぞれに良く馴染む素材だと思います。今回、ヌタウナギとともに入っていたトックも炭火でほどよく焼かれて香りも良く一層おいしくいただきました。

 量はそれ程多くなくて食事を軽くしていたのですが、2人で一皿はちょっと物足りない感じでした。後で知りましたが、このお店は平日でも6時を過ぎると並ばずに入るのは難しく、少なくても1時間待ちだそうです。それを聞いて、私が行った日は雨だったせいでしょうか、30分待っただけなのでラッキーだったと思いました。


  ◎ハングル単語メモ
    ・꼼장어(コムジャンオ):ヌタウナギ・沼田鰻(正しくは먹장어:モクジャンオだが、日常会話では꼼장어が使われている)
    ・구이(グイ):焼き
    ・비(ビー):雨
    ・영화(ヨンファ):映画

  ◆今月のおまけ写真
 私の住む水原市には、周囲が5.74kmに達する華城(世界文化遺産)があります。
 10月の初めには、今年で45回を数える「水原文化祭」があり、この華城を作った正祖大王が当時の都ソウルから水原に来る時の盛大なパレードを1500人の水原市民が参加して再現します。

  • 金昭英(キム・ソヨン)1979年江原道江陵市生まれ
    東京の語学スクールで日本語を学び、現在は水原市で日本語通訳として働いている。