
今回は京畿道・安養(アニャン)市に行って来ました。
流行に敏感な高校生や大学生に人気のこの町は、安養駅を中心に巨大な地下商店街が拡がり、洋服やアクセサリー、靴などのお店がぎっしりと並んでいます。
私が安養へ行くもうひとつの理由は手頃な値段でおいしい店がたくさんあるからです。

安養(アニャン)の地下街 / 今回紹介するお店の外観
安養駅のそばに、以前、通りがかりで入った「サンオジンオ(活きイカ)・ヤンプン(金属製のボウル)・ムチム(和え物)」という名前のお店があります。活きイカの和えものをヤンプン(金属製のボウル)に入れて提供する、という名前通りの料理がメインのイカ料理専門店です。
ヤンプンは主に調理をする時に使いますが、昔はこのヤンプンにビビンパなどをまとめて作り、家族や親しい人と取り皿を使わずそのまま一緒に食べる時にも使いました。
そのようなことから、韓国人はこの容器で一緒に食べる時には親近感や一体感、そして懐かしさを感じるので、最近はわざわざこの容器を使うお店が増えました。

入口の両側に水槽があり、イカが泳いでいる / 料理用のイカをタモですくう
それはさておき、私は海辺の町で産まれ育ったので海産物には少々うるさく、さらに地元はイカの名産地で実家に帰るとおいしいイカを味わえることもあって、よそではイカをあまり食べたくない、という私の考えをこの店は変えてくれました。
お店の入口の両側に新鮮なイカが泳ぐ水槽があり、店内はそれほど広くはなく庶民的で素朴な心地よい空間です。最近流行の室内屋台という感じでしょうか。オープンキッチンなのでイカをさばいて料理する過程が見られます。

メニューの一番上が今回紹介する料理 / 店内、奥がオープンキッチン
お店の看板メニューを頼んだら、突き出しとしてワカメスープが出てきました。韓国のワカメスープは、牛肉やアサリなどでだしを取り、ワカメをたっぷり入れるので味が濃くて深いのが特徴です。この店のワカメスープにはエゴマ粉も少し入って、まるで実家の母が作ってくれたような味でした。韓国ではお誕生日にワカメスープを食べるのですが、たまたまこの日は一緒に行った一人暮らしの友人の誕生日だったので、メイン料理が出る前にうれしさで胸がいっぱいになりました。

韓国式のワカメスープ / ヤンプンに盛られた活きイカの和えもの
ワカメスープのおいしさで、さらに期待度がアップしたメイン料理が出てきました。細切りしたイカに、ニラ、タマネギ、セリ、大根、ニンジン、キュウリ、梨、ゴマの葉などがたっぷりと入り、お店の特製コチュジャンたれで味を付けて、一番上にトビッコがたっぷりとのせられています。生きていたイカを使っているので、味が良く、歯応えがとても良いです。野菜も新鮮なので甘辛いたれに混ざってもその一つ一つの味がしっかりとします。

トビッコがたっぷりとのせられています / 海苔で巻いて食べるのもおいしい
口の内に残るセリの香も好きですが、何よりも私を一番幸せな気分にさせたのは、たっぷりとのせられたトビッコを噛む楽しみです。トビッコを惜しみなくたくさん入れてくれたおかげで贅沢な気持ちになります。一緒に出る海苔に巻いて食べると辛い味が少し落ち着いて、食べ方は少ししか違わないのに、また違うおいしさを感じます。この店をまた訪れる理由の一つになりそうです。

1/4位残ったら… / ビビンバの材料を追加します

よく混ぜたら… / 手で俵型にまとめます
フィナーレは4分の1位残ったところへ、ご飯、トビッコ、海苔を入れ、コチュジャンとゴマ油で味付けをして良く混ぜます。それから、お店で用意してあるビニール手袋を使って食べやすい大きさにまとめます。これは自分で作れるのが面白くて結構盛り上がります。
このお店の味はすべてが最高で、まるで故郷に帰っておいしい食事をしたような気分でした。
◎ハングル単語メモ
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・산오징어(サンオジンオ):生きているイカ
・핫양푼(ヤンプン):金属製のボウル
・무침(ムチム):和え物
・날치알(ナルチアル):トビッコ
・생일(センイル):お誕生日
- 金昭英(キム・ソヨン)1979年江原道江陵市生まれ
東京の語学スクールで日本語を学び、現在は水原市で日本語通訳として働いている。