風土47
 
二東カルビ

 5月初め、京畿道・抱川(ポチョン)市に行って来ました。
 新しくできた高速道路ではなく、山や川に沿って走る47番国道を行くとソウルから約2時間の距離にあります。
 自然景観が秀麗で名勝地が多い抱川市ですが、その中でもアチムゴヨ樹木園はTVや映画のロケ地として有名になり、韓国では誰もが一度は行って見たいと思う所です。
 1996年、大学の園芸学科教授が設立したこの樹木園は、約10万坪の敷地に韓国庭園の美を集め、季節ごと、テーマごとに様々な姿を見せてくれる美しい庭園です。5月はつつじなどの花が満開で多くの人々が訪れます。


アチムゴヨ樹木園

 抱川市は、一東(イルドン)と二東(イドン)に分かれています。なかでも二東は昔から水の味が良いことで有名です。そのため、100%天然水を使って仕込む二東マッコリの名声は大きなものがあります。また、二東は焼肉でも名高く、一時150軒を超える焼肉店がありましたが、牛肉の値上がりなどで半分ほどが店を閉め、現在は80軒余りとなっています。しかし、一度味わえばその味を忘れることができなくてまた訪れる常連の客が多いようです。どのお店も「元祖三代目」という看板を掲げてずらりと並んでいるので、その中から一つを選ぶのは大変です。それで、私は知人がお勧めのイェナル(昔)二東カルビという店を選びました。


イェナル(昔)二東カルビ。外観(左)と店内

 名物の二東牛カルビは、美味しい天然水、醤油、水飴、大根、生姜、たまねぎ、長葱、ごま油など15種以上の材料を煮込んで作った自家製のタレに肉を漬けて48時間熟成させます。この味付け牛カルビ1人前が24,000ウォン(日本円で1,800円ほど)。ちょっと高い気もしますが、大人4人なら3人前でも十分なほどの量ですし、追加する心配をせず、値段も気にせず、牛カルビをこれだけ贅沢に楽しめる所はなかなかないと思います。


これでカルビ3人前!テーブルの上はおかずも並んでびっしり

 食べ方が日本とは少し違い、韓国の焼肉店にはタレがなく、サンチュとエゴマの葉を一緒に、あるいはそれぞれに、カルビとごま油で焼いたニンニク、味噌を包んで食べるのが一般的です。また、サンチュやエゴマの葉の代わりに酢漬けの大根スライスや白キムチで食べてもさっぱりしておいしいのです。


左から、サンチュとエゴマ、酢漬け大根スライス、白菜の白キムチ

 辛いのが好きな人は、唐辛子の醤油漬けを入れたり、カルビを口に入れた後、青唐辛子にみそを付けて一口噛むと、タレの甘さと唐辛子のぴりぴり感が口の中で一杯になります。


左から、唐辛子の醤油漬け、青唐辛子と辛味噌

 おかず(パンチャン)一つ一つにも気を使って作っているので、このおかずの味が気に入って通う人も少なくないようです。氷を浮かせた冷たいトンチミ(水キムチ)、いろいろな山菜和えなど約6種類が付きます。


水キムチ、山菜和えものなど、おかず(パンチャン)いろいろ

 名物のマッコリも欠かせないでしょう。きれいな水と米100%で「かめ」を使って醗酵させる昔ながらの作り方なので、味が濃くて後味もすばらしいです。二東で作られるマッコリは地元でしか飲むことができませんので、そのためだけに行く価値があると思います。


名物の二東マッコリで乾杯!

 さて、お腹も一杯になりましたが、最後に冷麺を食べないと何か物足りないのが韓国人。ということで、冷麺を食べて今回はおしまいです。




  • 金昭英(キム・ソヨン)1979年江原道江陵市生まれ
    東京の語学スクールで日本語を学び、現在は水原市で日本語通訳として働いている。