風土47
 
ビンデトック

 日本で知られた韓国の代表的な食べ物のひとつがチヂミですが、チヂミには多くの種類があります。

 その中から、今回は日本ではまだよく知られていないようですが、韓国でこのチヂミを知らないと本当に韓国人なのかと疑われるほど有名なチヂミ「ビンデトック(緑豆チヂミ)」をご紹介しましょう。


これがビンデトックです。美味しそうでしょう?

 作り方は地域によって少し異なりますが、一般的にはきれいに洗った緑豆を一日ほど水に浸けて軟らかくし、水を少し加えて摺りおろします。石臼で摺りおろすのが伝統的な方法ですが、なかなか手間がかかります。今は100%緑豆の粉を市販をしているので気軽に作ることができます。

 中に入る具も用意します。もやしとワラビは軽く茹でて食べやすい大きさに切っておきます。古くなったキムチを刻んで水分を切ります。豚肉を刻んで醤油、ねぎのみじん切り、ニンニク、ごま油、ごま、塩を入れて和えておきます。これらを摺りおろした緑豆とよく交ぜて塩と胡椒で味を調えます。

 熱いフライパンに油をたっぷりと入れ、適量のたねを入れ、広げてゆっくり焼きます。片面がキツネ色になったら裏返し、普通のチヂミより厚いのでこれを繰り返しながら時間をかけて焼きます。一回焼いた後、食べる直前にもう一度焼くとサクサク感が一層増しておいしくいただけます。

 この前、ニュースで春にこのような寒さは実に100年ぶりと伝えていました。でも、寒さより風のほうがもっとひどいように感じましたが、ビンデトックはやはり寒い時期に食べるのがおいしいと多くの韓国人が思うように、私も今日の寒さがビンデトックを食べる上でむしろ嬉しく感じられました。

 ソウルの広場市場にて

 さて、今回の取材ではソウルに行ってきました。水原から地下鉄を使って約1時間でソウルの広場市場に到着。

 さすがに有名なだけあって、TVやインターネットで見たよりずっと活気があふれ、豊富な食べ物に圧倒されました。ちゃんとしたお店は通路の両側に面してずらりと並んでおり、その真ん中の大きい広場には7、8人がやっと座れるくらいの大きさの屋台が並んでいます。市場の入口に立って視界に入る屋台だけでも数十軒あります。


広場市場の内部

 どの屋台もおいしそうだったのですが、一番目立っていた「バッガネのノクトゥビンデトック」という屋台に入ることにしました。この屋台は近くにちゃんとしたお店もあって、そのお店の外の置いてあった長椅子に友達と二人で座り、プレーンなビンデトックをひとつ頼んで待つことにしました。


「バッガネのノクトゥビンデトック」という屋台

 屋台の方では、3、4人のおばさんたちが次から次へとビンデトックを焼いていました。もう一方では機械式の石臼が緑豆を摺りおろしているし、他の一方ではおばさんが材料と緑豆を交ぜていました。石臼を人ではなく機械で回している以外は、昔の作り方そのままでした。


左が機械式の石臼で緑豆を挽いているところ。右は具材と混ぜ合わせているところ

 隣のテーブルに座ったおじさんたちが、ビンデトックとマッコリという組み合わせでとてもおいしそうに食べていたので、ちょっと早い時間帯でしたが、私たちもマッコリを頼んでしまいました。


プレーン・ビンデトック(一人前)とマッコリ。

 こんがりと美味しそうに焼かれた熱々のビンデトックは、表面が本当にサクサクしていておいしく、中は他のチヂミとは違って柔らかく、香ばしさがもやしとキムチの食感によく合います。油をたくさん使っているのに予想と違って脂っこさを感じませんし、具がもやしとキムチ位しか入っていないのに、こんなに豊かな味がすることに驚きました。隣の席にいた日本の人も、おいしい!と親指を立てて満足そうな顔をしていました。

 普通のサイズでも二人で食べるにも十分な量で、この店で働く人々の人情までが一杯詰まっているように感じました。


こんがりと焼き上がったビンデトック

プレーンなので、具はもやしとキムチくらい。至ってシンプルだが美味い!

 お店の社長に聞くと、遠くからわざわざ買いに来る人が多く、それに加えてこのごろは外国観光客、特に日本人のお客さんも多いそうです。

 この市場を見て回るだけでも2時間ほどかかり、見るだけでも楽しく満足して帰ることができそうな気分でした。

 ビンデトックの取材だけで終わるのはもったいないので、次回はこの市場で味わえる他の食べ物を紹介したいと思います。




  • 金昭英(キム・ソヨン)1979年江原道江陵市生まれ
    東京の語学スクールで日本語を学び、現在は水原市で日本語通訳として働いている。