


利休と晶子を顕彰する「さかい利晶の杜」

与謝野晶子生家跡とちんちん電車の阪堺線

海外との交易の玄関口の港と旧燈台

堺打刃物など鍛冶職人の家が今も目に付く阪堺沿線

200年余の八百源來弘堂の銘菓「肉桂餅」

伝統の味と技を伝え続ける松井泉の「焼あなご」

堺商人の暮らしがしのばれる歴史館山口家住宅
アプローチは南北に貫く5本の鉄道。なかでも歴史探訪は古墳エリアを走るJR阪和線と環濠エリアに数多く停留所をもつ路面電車の阪堺(はんかい)電軌。宿院駅界隈は納屋衆と呼ばれた豪商ら多くの商人や職人が集まり、大いに栄えた。
その納屋衆の家に生まれたのが茶の湯の大成者の千利休。屋敷跡地が今も空き地で残っている。すぐ近くに明治に誕生したのが『みだれ髪』で知られる情熱の歌人・与謝野晶子。明治・大正・昭和を通して活躍。郷土の誇る2人の名前の頭文字を名称にした文化施設「さかい利晶(りしょう)の杜」が2015年にオープンしている。
1階には茶の湯の歴史文化や人物像を伝える「千利休茶の湯館」と茶の湯体験室、2階には人と作品を讃える「与謝野晶子記念館」。和菓子屋だった生家も再現され、帳場に座った晶子が思い浮かぶ。
路面を走るちんちん電車の阪堺線沿線には古寺社や歴史ゆかりの地が多くある。北の「ザビエル公園」は、フランシスコ・ザビエルが京都での布教を目指して上陸した堺に1ヶ月滞在した縁で名付けられた市民の憩いの場である。
室町末期の堺は「日本でもっとも多くの富裕な商人が住み、かつ大なる自由と特権を持った自由市」と宣教師の書簡に書かれた自治都市。明(中国)やカンボジア、フィリピンなどとの交易で殷賑を極めた。
東に少し入った府立泉陽高校は与謝野晶子が学んだ旧堺女学校。「君死にたまふことなかれ」の詩碑がある。短歌や評論、言動など世間にとらわれない自立と自由の精神は自由都市の歴史で育まれた。同校からは脚本家の橋田寿賀子、直木賞作家の西加奈子、女優の沢口靖子が巣立っている。
学校の近くにある創業200年余の八百源來弘堂の「肉桂餅」や小島屋の「けし餅」には南蛮貿易の時代が香る。またここは陶芸家で美食家の北大路魯山人に「堺近海のあなごは格別」といわれた全国屈指のあなごの町。伝統の技と味をうたう松井泉の「焼あなご」が名物である。
近くには堺事件に連座した土佐藩の切腹で知られる蘇鉄寺の妙國寺、日本最古の庄屋住宅といわれる堺町家歴史館山口家住宅が、20ヶ寺ほど連なる寺々とともにしっとりした町並みをつくっている。折にふれて訪ねたくなる町である。
〈交通〉
・南海本線堺駅、阪堺電車宿院など下車
〈問合せ〉
・堺観光コンベンション協会☏072・233・5258