風土47
今月の旅・見出し
 
 
群馬県■清流と森林に抱かれた湯も人もやさしい四万温泉


「四万ブルー」と呼ばれる美しい四万川

爽快感の「四万清流の湯」の露天風呂

旅館や飲食・土産店が集まる新湯地区

人気高い高田屋菓子舗の「おいらんふうろう」

伝説を銘菓で表現した楓月堂の「夢まくら」

充実の「時わすれの宿-佳元」の朝食

四万の歴史を語り伝える日向見薬師堂
 群馬県西北部、四万川の上流、三方を山に囲まれた渓間に細長く連なる千年の古湯・四万温泉は伊香保、草津とともに上毛3名湯で知られる。昭和29年に国民保養温泉の第1号指定を受けている。

 水と緑に沿う温泉街は南北に長く、温泉口、山口、新湯(あらゆ)、ゆずりは、日向見の5つの湯処からなり、その総称が四万温泉。夢のお告げで発見された四万の病に効くといわれる霊泉で、古くから湯治の湯として親しまれてきた。

 リューマチ、神経痛、皮膚病に効能高いナトリウム・カルシウム‐塩化物・硫酸塩泉。飲泉もできて胃腸病にもいいと評判だ。体に適温の湯が、四万清流の湯、河原の湯、御夢想の湯など開放的な外湯をはじめ、大小さまざまな35軒余の旅館・ホテルの風呂にたっぷりあふれている。

 温泉街の傍らを流れる四万川がさわやか風と音を運び、浅瀬では透明な流れが、淵ではハッと息をのむほどの美しい碧さの“四万ブルー”を湛える。

 今回はそんな川沿いに立つ宿名も粋な「時わすれの宿-佳元」(0279・64・2314)に宿泊した。部屋付きの木造りの露天風呂は熱々の湯が一晩中もったいないほどあふれ続けるので、大浴場のほかに3度も湯船に浸かった。

 飲食店、土産物店が連なる中心街の新湯地区では、登録有形文化財の積善館のアーチ廊下橋や石造りの浴場の河原の湯、スマートボール場や飲食店が並ぶ昭和レトロの通りをぶらついた。そんな途中で土産に買ったのが、楓月堂(0279・64・2508)の風味やさしい餡入りの求肥餅「夢まくら」と高田屋菓子舗(0279・64・2702)のほっくりしっとり、甘さほどよい紅花いんげん豆の濡納豆「おいらんふうろう」を買った。

 翌日は温泉街の奥まった日向見地区へ。室町時代末期、真田信幸が武運長久を願って建立したという国の重要文化財の日向見薬師堂を拝観して、すぐ横の、霊泉というお告げで発見された四万温泉の発祥と伝える共同浴場の御夢想の湯をのぞく。

 四万温泉協会の宮崎博行さんは、ここまで来たのだからと、車で最奥の四万川ダム、奥四万湖まで案内してくれた。人造湖だが水は鮮やかな四万ブルーで、周囲4キロの湖畔は新緑や紅葉がみごとだという。水と緑のいで湯の四万温泉の清々しさの原点はここにあるだろうと思った。


〈交通〉
・JR吾妻線中之条駅下車、
 四万温泉までバスで40分
〈問合せ〉
・四万温泉協会☏0279・64・2321
・中之条観光協会☏0279・75・8814
 
兵庫県■潮風の散策路、開港150年の神戸ベイエリア


シンボルのポートタワーと神戸海洋博物館

名所を循環する神戸シティ-・ループ

飲食や土産店が連なるモザイクの外観

神戸港クルージングで人気のコンチェルト

船上からの大観覧車とアンパンマンミュージアム

神戸駅からモザイクへはおしゃれな並木道を歩く

つい買ってしまう淡路屋の駅弁「神戸のステーキ弁当」
 六甲の山並みを背に海にして東西に細長く広がる神戸は、古代、務古(武庫、六甲)の水門、奈良朝以降は大輪田泊と呼ばれた海上交通の要衝。江戸時代は西廻り航路(北前船)や西国との間の物資の集散地として賑わった。

 日本屈指の国際貿易港だが、外国に開かれたのは1867(慶応3)年。今年、「神戸開港150年」を迎えて、各種の記念事業が催されている。主要舞台の1つの中突堤やメリケンパークで7月15日~8月6日の23日間開催される「海フェスタ神戸」では、海の産業や技術、文化が身近に体験できる。帆船フェスティバルや花火大会ではひときわ賑わうだろう。

 ここではミナト神戸のシンボルの真っ赤なパイプを鼓の形に組み込んだ神戸ポートタワー(078・391・6751)を見上げ、最上階の展望室に立って阪神・淡路大震災からの復興めざましい高層ビルや高速道路の市街地や六甲山、港や海の360度の眺めを楽しむ。7000個のLEDが夜空に浮かぶ姿も幻想的だという。

 すぐ近くでネット状の白い屋根が目を引く神戸海洋博物館(078・327・8983)では海、船、港に関する展示で学ぶ。カワサキワールドでは川崎重工が手掛けた新幹線車両やヘリコプター、ロボットなど楽しく学び、体験ができる。

 メリケンの名はご存知のように、開港翌年に開設されたアメリカ領事館のアメリカがつづまってメリカ(ケ)ンになったとか。

 対岸間近に見えるのがショップやレストランの集合したモザイクやノース・サウスモールからなる複合商業施設の神戸ハーバーランドumie(078・382・7100)。ここからメリケンパークを望むアングルは日本離れしたおしゃれな港風景だった。

 約10分でゆったり回る大観覧車や子どもに大人気の神戸アンパンマン・こどもミュージアム&モール(078・341・8855)も気になった。

 接岸する「コンチェルト」(078・360・5600)は神戸港周遊クルージング船。ランチやティー、ディナーなど時間を区切って食事をしながら、神戸港から明石海峡大橋近くまで2時間を航行。海から見るミナト神戸の風景こそ表の顔だろう。



〈交通〉
・JR山陽線元町駅、神戸駅下車
〈問合せ〉
・神戸市観光企画課☏078・322・6381
・神戸国際観光コンベンション協会
 ☏078・303・1010
 
中尾隆之
中尾隆之(なかおたかゆき)
高校教師、出版社を経てフリーの紀行文筆業。町並み、鉄道、温泉、味のコラム、エッセイ、ガイド文を新聞、雑誌等に執筆。著作は「町並み細見」「全国和菓子風土記」「日本の旅情60選」など多数。07年に全国銘菓「通」選手権・初代TVチャンピオン(テレビ東京系)。日本旅のペンクラブ代表・理事、北海道生まれ、早大卒。