


水都の象徴の水門川畔の掘抜井戸発祥の地

明治維新まで戸田氏が治めた大垣城天守閣

八幡神社境内に湧水があふれる水汲み場

薄皮と繊細な漉し餡が評判の「金蝶園饅頭」

見た目も味わいもいい槌谷の「竹羊羹」

奥の細道の旅の最後の船出の船町川湊

学び、憩える奥の細道むすびの地記念館
その面影は戦災でほとんど失われたが、復元の大垣城やそこここに残る史跡が歴史を語りかけてくる。特に元禄2(1689)年、江戸・深川から5月半ばに旅立った松尾芭蕉の2400キロの「奥の細道」の終わりの地になったことに心ひかれる。
街がけっこう広そうなので、レンタサイクルで回ることにした。掘抜井戸発祥地から街の中を鍵の手に延びる水門(みなと)川に沿ってペダルを踏んだ。
大垣城東総門跡をしのばせる貴船広場から、からくり山車で知られる大垣まつりの八幡神社に参拝。鳥居脇の“大垣の湧水”には持参のポリタンクやペットボトルを下げた人が入れ替わり立ち替わり出入りする。聞けば無料の水汲み場で、大垣は街角や公園など随所で良質な地下水があふれる水都(スイト)だという。
なるほどスイトタクシーやスナックスイト、スイトピアという公共施設も水防団もある。名物の水まんじゅうをはじめ城下町からの銘菓もいろいろある。
有名なのは時代をしのばせる建物の金蝶園総本家(0584・75・3300)の酒元種入りの薄い小麦粉生地で漉し餡を包んだ「金蝶園饅頭」や、藩御用菓子司を務めた創業260年の歴史的建物の槌谷(0584・78・2111)の、柿ジャムに砂糖、寒天を合わせて竹に流した「柿羊羹」などいろいろとある。
藩主戸田氏の菩提寺の圓通寺の立派な山門を見た後、大垣城跡に復元の4層4階の天守閣に上る。関ヶ原の戦いや歴史資料などの展示を見つつ最上階に立つと、四周に濃尾平野や関ヶ原など視界がひらけた。室町、安土桃山、江戸など激動の歴史に思いが広がる。
城の南西方角の西総門跡あたりは、芭蕉が327年前、5ヶ月の旅を今の暦で10月初めに終えた「奥の細道むすびの地」。10日ほど滞在し、門人たちに見送られて住吉燈台の立つ船町港から水門川を舟で式年遷宮の伊勢(二見浦)を目指して焼き蛤で有名な桑名へ向かった。その時の句が「蛤のふたみに別れ行く秋ぞ」。
その文学風景を前にする一角に4年前、芭蕉の奥の細道など芭蕉の人と業、旅に生きた生涯を展示する芭蕉館を中心にした奥の細道むすびの地記念館(0584・84・8430)ができた。喫茶室やみやげ販売コーナーもあり、足休めにもかっこうな施設である。
今年は10月1日~2日、ここを中心に「奥の細道サミット」が開かれる。そういえば「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」を辞世の句に、大阪で人生の旅を終えたのは5年後の10月12日。故郷の伊賀市(旧上野市)では芭蕉祭が催される。
〈交通〉・JR東海道本線大垣駅下車
〈問合せ〉
・大垣観光協会☎0584・77・1535


船が接岸するマグロ専用の銚子第一漁港

生マグロ専門に扱う銚子第一卸売市場

第一卸売市場の漁協食堂の焼魚定食600円

漁師の信仰厚い朱塗りも鮮やかな菅沼観音

さのやの「今川焼」と観音駅の「たいやき」

ウオッセ21と眺望絶佳のポートタワー

利根川河口あたりの銚子漁港と市街風景
街は1300年余前、漁夫の網に掛かった十一面観音像を安置した円福寺の門前町に始まる。朱塗りも鮮やかな仁王門や本堂、五重塔、鐘楼堂などが整った立派な寺で、飯沼観音の名で親しまれている。門前にはかつての賑わいをしのばせる整備された銀座通り(ココロ―ド)が延びている。
観光案内所で聞いた五重塔そばにあるさのやの「今川焼」は小麦粉生地にたっぷりの餡を入れた大きなタコ焼き風。あつあつで大きく、食べ応えがある。近くの銚子電鉄観音駅内で目の前で焼く「たいやき」とともに外せない銚子名物だ。
飯沼観音から北に3分も歩くと利根川岸にスマートな建物にリニューアルの第一卸売市場がある。マグロの水揚げ専用の漁港で、セリは午前11時頃に終わっていたが、漁業協同組合経営の食堂「まいわい」で揚がったばかりの海鮮料理を食べた。味にも値段にも満足した。
テーブルにはヤマサとヒゲタの2つの醤油瓶が並ぶように、銚子はご存じ醤油の町。江戸時代、黒潮にのって来て住みついた漁師と同じように、日本の醤油発祥の紀州から醤油づくりの人や技もやってきたのである。
醤油の銚子といえば「ぬれ煎餅」。熱いうちに醤油に漬けた軟らかいせんべいの「ぬれせん」の名で最初に作ったのが、住宅街にある路地裏の柏屋(0479‐22・0480)という店。昭和38年にかたやきのおまけに付けたのが始まりだという。店では門外不出の“賞味期限80秒・あつあつ”のぬれせんが味わえる。
多くの店で作るようになったのは平成になってから。銚子電鉄が慢性的赤字経営の打開のために販売した“銚電のぬれ煎餅”は10年ほど前にブレイクした。その銚子電鉄で17分乗ると、日の出の早い海の景勝と温泉の犬吠埼がある。
利根川河口の先端の漁港(第3卸売市場)近くのウオッセ21で魚介や総菜を物色してレストランで海の幸を食べ、隣接の57.7メートルの銚子ポートタワーに上った。遥か太平洋や長い利根川など360度の展望に気持ちが実に晴ればれとした。
〈交通〉・JR総武本線銚子駅下車
〈問合せ〉
・銚子市観光商工課☎0479・24・8181
・銚子市観光協会☎0479・22・1544

空気が清涼な秋は熱めのお茶が恋しい。そのお茶うけに合うのが羊羹だろう。餡に砂糖や寒天を混ぜて煮詰め、舟(容器)に流して固めたもので、棒状に作るので棹物と呼ばれる。
字の如く、羊肉の羹(あつもの=汁物)が中国から伝わったものだが、安土桃山時代、京・伏見の鶴屋(のちの駿河屋)が小豆餡に砂糖、寒天で固める練羊羹を考案したのが始まりだという。
大まかに分けると、「練羊羹」、「蒸し羊羹」、「水羊羹」の3種類がある。しっとりしてしっかりの歯応えの練羊羹の代表は東京・とらやの「竹皮包羊羹」、佐賀・小城の村岡総本舗の「小城羊羹」など多数。小麦粉や葛粉を加えて蒸し固める蒸羊羹では名古屋・美濃忠の「上り羊羹」が高級で絶品。静岡・追分本舗の「追分羊かん」なども知られている。
水羊羹では栃木・日光の三ツ山羊羹本舗の「水羊羹」や冬の銘菓の福井・えがわの「水羊かん」は知る人ぞ知る。
餡に加える物によって栗、塩、醤油、芋、茶、小倉羊羹などのほか、地名や店名を名付けたものも多い。ゴム風船に真空充填したような福島の「玉羊羹」や北海道の「まりもようかん」、円筒に流し込む北海道の「五勝手屋羊羹」はユニークだ。

村岡総本舗(佐賀・小城市)☎0952・72・2131
北海道産小豆、備中産白小豆など厳選の原材料を練り上げて舟に流し、固めて切り出す特製切り羊羹は練羊羹の代表。表面に浮き出す砂糖のシャリ感と中の滑らかな食感が深い甘味を醸す。小城羊羹の初祖。

美濃忠(名古屋市)☎052・231・3904
江戸後期創業の藩御用菓子司の伝統の技のもと、上質な小豆、砂糖、小麦粉などの原材料をじっくり蒸した高級な蒸し羊羹。とろけるほど軟らかいが上品な甘さの余韻に浸される。製造販売は9月中旬~5月下旬。