


7年振りの公開となった瑞巌寺本堂

華麗な桃山美術の粋を伝える上段の間

松島観光のシンボル的存在の五大堂

松島では外せない湾めぐりの観光遊覧船

小島のなかでも印象深い1つの仁王島

磯の風味いっぱいの三陸めかぶ丼 1300円

噛めば味が膨らむ松島蒲鉾の笹かまぼこ

軽くてはかなげだが伝説の「松島こうれん」
民謡「大漁唄い込み」に唄われた松島・瑞巌寺は、828年に慈覚大師円仁の開基の天台宗延(円)福寺に始まるという名刹である。江戸時代、仙台に居城を移した伊達政宗は5年を要して桃山様式の粋を尽くした禅宗寺院・瑞巌寺として復興。奥州随一の禅寺として荘厳さを誇り、政宗の菩提寺ともなった。
国宝・瑞巌寺本堂(700円)が平成の解体大修理を終えて、この4月5日に7年振りに公開。中門を入ると正面に本堂がどっしりとあり、右に回廊で結ばれた大きな庫裏と大書院が並ぶ。中庭には折しも、政宗が朝鮮から持ち帰ったという紅白の2樹からなる臥龍梅が咲き誇っていた。
本堂は正面39㍍・奥行き25㍍もある入母屋造りで、美しい流線の本瓦葺きの屋根の下に10室を数える大広間には、秀吉が京に建てた聚楽第を模したという絢爛豪華な障壁画、襖絵、彫刻などが随所にある。とくに藩主御成の上段の間は襖絵、彫刻、格天井に見とれてしまう。大修理の際に貴重な遺構も多く発掘・発見された。
寺や伊達家に関する文化財を多数収蔵の宝物館(青龍殿)のあとに、立派な煙出しをのせた切妻造りの国宝の庫裏(台所)を見学し、帰途は僧侶が修行したという岩窟に沿って歩く。見れば以前は杉並木の鬱蒼たる参道だったが、浸水による塩害のため杉の根元や苔の傷み出したので伐採したという。
東日本大震災は瑞巌寺の大修理中に起こった。目の前の松島湾は数々の岩島が天然の防波堤になって、浸水はしたが激甚な津波被害を免れたという。大小260余りの松が茂る小島が浮かぶ松島湾内1周コースの観光遊覧船(50分・1500円)に乗って日本三景を探勝し、海岸に戻り、橋を渡って伊達政宗が創建した松島のランドマークの瑞巌寺五大堂に参拝して、昼食の店を探した。
松島のグルメは秋冬ならダンゼンにカキだが、通年ならば海鮮料理。味処・さんとり茶屋(022・353・2622)で勧められたのは5品盛りの本日のお刺身御膳と三陸めかぶ丼。めかぶは緑鮮やか磯の香りのぬるぬる食感がなかなかイケた。
土産なら松島蒲鉾(022・354・4016)などで笹かまぼこ。店内では自分の焼き立てをその場で食べられる笹かまぼこの手焼き体験(200円)もできる。
一子相伝700年の技という紅蓮屋心月庵(022・354・2605)のササニシキを一枚一枚手焼きした「松島こうれん」はここならでは。女性の鑑といわれた紅蓮尼の切ない逸話がほろりと染みる白くて軽くてはかなげな煎餅だ。
〈交通〉・JR仙石線松島海岸駅下車、徒歩5分
〈問合せ〉
・松島観光協会☎022・354・2618
・瑞巌寺022・354・2023


奈良、鎌倉に並ぶ日本3大仏の高岡大仏

銅片の石畳や千本格子が風情の金屋町

土蔵造りに繁栄の名残しのばせる山町筋

ふわふわの不破福寿堂の銘菓「鹿の子餅」

喉越しつるり、コシのある氷見うどん

ホタルイカ、白エビなど美味な「富山湾弁当」

カラフルなボディののんびりのどかな万葉線
一旦外に出てすぐの城端線に乗り換えて3分。高岡駅に降り立つと大伴家持像に迎えられた。万葉集で有名な歌人だが、実は1270年前に越中の国守として伏木地区に5年赴任した立派なお役人。その家持をしのんで毎年10月第1金・土・日曜に高岡万葉祭り「万葉集全20巻朗唱の会」が長く催されている。
とはいえ町としての高岡の始まりは約400年前に加賀2代目藩主・前田利長によって開かれた城下町。利長はわずか5年で病いに没し、一国一城令によって廃城になるが、堀や石垣が残る城跡は利長公の銅像と桜と緑、水辺の古城公園になっている。
短い間に利長が呼び集めた鋳物業が根付き、銅器や漆器などモノづくりや商人の町として発展した足跡を趣あるみごとな町並みに残している。
中心街近くに銅器の町のシンボルの高岡大仏がどっしりと坐し、駅から歩いて20分の鋳物発祥の金屋町にも千本格子の美しい町並みがずらり並ぶ。
重厚な土蔵造りが点在する山町筋には高岡商人の栄華ぶりが伝わってくる。5月1日、高岡の金・漆工芸の技を込めた桃山調の豪華絢爛な7基の山車が巡行する「高岡御車山祭」は、ここ高岡商人の心意気が弾ける行事である。
高岡発展の種を蒔いた利長公の菩提寺の瑞龍寺は県内唯一の国宝建築。大きくて格調高い重厚な禅寺寺院で、利長墓所とともに高岡駅の南側、徒歩15分の所にある。
“天然の生け簀”とよばれる富山湾はブリ、白エビ、ホタルイカ、ブリなど海の幸の宝庫。湾で獲れるものだけの食材が詰まった源の駅弁「富山湾弁当」1000円や駅内で食べた喉越しよくてコシのある氷見うどんに満足した。
町には城下町や商都に支えられた伝統の大野屋(0766・25・0215)の白小豆餡を求肥で包んで和三盆をふった銘菓「とこなつ」や、もち米と砂糖を練った羽二重餅に泡立てた卵白をあわせたふわふわ柔かいのにもっちり感のある不破福寿堂(0766・25・0028)の「鹿乃子餅」がおすすめの高岡名物だ。
市街の路面を走り、富山湾まで行く万葉線の電車も高岡の魅力を広く深く触れさせてくれた。
〈交通〉・JR北陸新幹線新高岡駅下車、城端線に乗り換え高岡駅下車
・JR城端線・氷見線、あいの風とやま鉄道高岡駅下車
〈問合せ〉
・高岡市観光協会☎0766・20・1547
・高岡市観光交流課☎0766・20・1301

餅、団子、饅頭とともに庶民的なお菓子に「せんべい」がある。形、色、味など実にさまざま。原材料は米粉か小麦粉が主体だが、味はしょっぱい、甘い、辛いいろいろある。お茶やコーヒーなど飲み物との相性も幅広い。
特徴的なのは「草加煎餅」に代表されるように東日本は米粉を練って丸型にして炭火などでパリッと焼き上げたしょっぱ系。
対して西日本は小麦粉に鶏卵や砂糖などを溶かしこみ、型に流して四角形に焼き上げた甘系で、神戸の亀井堂や菊水で知られるサクッとしたカステラ風味の「瓦煎餅」が代表的。香川の宗家くつわ堂の「瓦せんべい」はバリッと硬いが、噛むほどに和三盆の上品な甘さが広がる。
九州では小麦粉に砂糖たっぷりの佐世保の「九十九島せんぺい」がパリッとした歯応えにピーナッツ味が弾ける。鉱泉水で溶いた雲仙温泉の「湯煎餅」も「ゆせんぺい」と読む。鉱泉といえば群馬の「磯部煎餅」や有馬温泉の「炭酸煎餅」は薄くて香りほのかでサクッとした軽やかな歯触りが好まれる昔からの名物煎餅。他に小麦生地に初めて牛乳を入れた札幌の「山親爺」や同じく牛乳入りの福岡の半面型の「二○加煎餅」も長い人気のせんべいである。
他に生姜汁の甘辛さが風雅な金沢の「柴舟」やエビを贅沢に使った愛知の「ゆかり」も美味しく心に残る名物煎餅。
パリッ、サクッの歯応えが身上のせんべいだが、千葉・銚子の「ぬれ煎餅」には独特のおいしさがある。

白沢せんべい店☎019・622・7227
黒ゴマ、ピーナッツのほかに小麦生地にカボチャやヒマワリの種など実に多彩。素朴だが香ばしくて飽きないおいしさ。6枚入り518円

九十九島せんぺい本舗☎0956・22・9109
亀甲型の6角形の小麦粉のせんぺい。こんがりキツネ色の中に散らしたピーナッツで島を表現。厚さ6ミリの歯応えパリッの甘さが絶妙。12枚入り720円