

冬到来を告げる葉も実も真っ赤なナナカマド
(函館・歴史の道百選の大三坂にて)
本州では紅葉前線が駆け足で南下し、中~下旬は京都あたりでは錦秋の盛りを迎える。
11月の日本列島は初冬と晩秋のせめぎ合う時。開運、商売繁盛の鷲(おおとり)神社(大鳥神社)の酉の市は今年は三の酉(29日)まであり、参道には福を掻き集める縁起物の熊手などを売る露店が並ぶ。押し寄せる年の瀬を感じる。


湖畔に大型旅館が連なる洞爺湖温泉街

どの宿の風呂も湖に面して眺めがいい

焼き芋そっくりの人気銘菓「わかさいも」

洞爺湖で長く人気の望羊蹄のハンバーグ

洞爺湖で必見の昭和生まれの昭和新山
サミット以来、外国人の旅行客が増えているという。駅内には中国語、韓国語、英語のパンフレットが並び、英語対応の案内係の女性も待機。バス停にはキャスター付き大きな旅行カバンの海外からの旅行者とおぼしきグループが並んでいた。
バスは大爆発跡を公園化した西山噴火口を経由して、20分ほどで洞爺湖畔の温泉街に。目の前には青藍色の湖、西欧の古城を思わせる白い遊覧船、こんもりした中島、その背景に蝦夷(えぞ)富士と呼ばれる美しい形の羊蹄山が浮かぶ。大きな盆景のような、箱庭のような整った明るい景観がひらけた。
洞爺湖は有珠山の噴火で生まれた周囲約43キロのほぼ円形のカルデラ湖。南畔に近代的なホテル・旅館や飲食・土産店、観光施設などが連なる火山の恵みの洞爺湖温泉がある。温泉街は整備され、湖畔も花と芝生、野外彫刻、足湯、ベンチなどを備えたしゃれたプロムナードになって、噴火記念公園や噴水広場、「北海道洞爺湖サミット宣言の地」のモニュメントなどが足を止める。
道南バスターミナルの2Fの北海道洞爺湖サミット記念館(0142・75・4400)ではサミット開催の様子を、また洞爺湖ビジターセンター・火山博物館(0142・75・2555)では2000年の噴火をはじめ有珠山火山活動に関しての映像・実物展示で解説。どちらも入場無料だった。
洞爺では昭和18年(1943)に畑が突然隆起して生まれ、いまなお噴煙上げる昭和新山とロープウエィのかかる有珠山と湖上遊覧の3つが外せない観光の目玉だが、他に温泉だけでなくジオパークとしての学びの地の顔や自然、景観、文化、体験など多様な楽しみができる観光地である。
食事なら創業70年の老舗の洋食堂「望羊蹄」(0142・75・2311)でステーキやハンバーグを。木造りのレトロな店内では、受け継がれたソースの旨味がいっそう味わい深かった。みやげでは豆が原料なのに焼き芋そっくりに仕上げた創業85年のわかさいも本舗(0142・75・4111)の名物「天下一品わかさいも」がロングセラーだが、わかさいもを揚げた「いもてん」もおいしくて人気がある。
〈交通〉・JR室蘭本線洞爺駅下車、バスで17分、洞爺湖温泉下車
〈問合せ〉
・洞爺湖温泉観光協会☎0142・75・2446
・洞爺湖町役場観光振興課☎0142・75・4400
・道南バスターミナル☎0142・75・3117


東西に船が往来できるよう掘削した万関瀬戸

2メートルもある石垣塀が残る武家屋敷跡

長い石段を上ると対馬藩主宗氏代々の墓所

厳原港近くのKIYOの「対馬バーガー」

参勤交代に持参した対馬銘菓のかすまき

海の女神を祭る由緒が高い和多都美神社

新鮮さが売りの漁師料理の「石焼料理」
『魏志倭人伝』に「山険しく、深林多く、道路は禽鹿の経の如し。(中略)良田無く、海物を食し、船に乗りて南北に市糴(してき=商い)す」と記され、大和朝廷時代は国に準ずる対馬国として扱われた。
玄関口は博多や釜山からの船が着く島の南東部の厳原(いづはら)。室町時代後期、藩主宗氏が館をここに移して以来、10万石の城下町としてひらけ、その面影の武家屋敷跡に石垣塀が今も街なかに散見する。
宗家の菩提寺の万松院の石灯籠が連なる石段を上がると、樹齢千年の大杉に包まれて歴代藩主と夫人らの巨大な五輪塔が立ち並ぶ、日本3大墓所に数えられる幽玄な雰囲気の漂う墓地がある。藩主宗氏は秀吉の朝鮮出兵で2度先鋒を強いられ、江戸時代は国交回復の交渉役を命じられるなど日韓の間で複雑な役回りを余儀なくされた。
そんな対馬の歴史資料が詰まった対馬歴史民俗資料館で、朝鮮から要求された謝罪表明の国書の偽造やその返書の改竄(かいざん)の策によって国交が修復したなど熱っぽく語るガイドさんの話に、対馬の苦渋を伴った役割の大きさを改めて思った。色鮮やかな朝鮮通信使絵巻に見入りながら、昨今のぎくしゃくした日韓関係は何なのだろうかと考えた。
厳原中心街の今屋敷に今年オープンした対馬藩家老屋敷の長屋門を再現した観光情報館「ふれあい処対馬」(0920・52・1566)は明るくゆったりして居心地のいい施設だ。ここで小豆餡をカステラ生地で巻いた対馬銘菓「かすまき」を賞味した。
昼に食べたのは焼いたアオリイカとヒジキをパテに練り込んだ対馬バーガーKIYO(0920・52・0873)の「対馬バーガー」。夕食は丸屋ホテル(0920・52・1970)で1時間以上熱した石に魚介などのせてジュージュー焼ながら食べる「石焼料理」や「対州そば」など対馬ならではの味を堪能した。清酒「白嶽」も美酒だった。
南北に長い対馬はもとは1つの島。それが江戸時代に大船越瀬戸を掘削、明治後期に海軍の艦船が出入りできるように万関瀬戸が掘削されて3つに分かれた。
そこにかかる万関橋を渡って、神々の島と呼ばれるほど多い神社の中でも筆頭とされる海の女神・豊玉姫を祭る和多都美(わたつみ)神社に参拝した。5つの鳥居のうち海中に立つ2つが干潮だったので、素足で渡って本殿に向かって礼と柏手を打った。
海彦山彦や竜宮伝説もさもありなん。神話の世界に誘われる思いがした。
聞けばここは浅茅湾の最深部。近くの烏帽子岳展望所からは快晴の日はリアス式の浅茅湾に浮かぶ多島美が素晴らしいという。対馬の魅力のほんのさわりの旅だったが、2度、3度訪れることになりそうな気がした。
〈交通〉・博多港から厳原港までフェリー(直行便)で約4時間30分
・博多港から厳原港まで高速船(壱岐寄港)約2時間15分
・福岡空港から対馬空港まで空路約30分、長崎空港から約35分
〈問合せ〉
・対馬市総合政策部・対馬市観光物産協会☎0920・52・1566