

カンゾウの花が一面に咲き広がる
6月の佐渡・外海府海岸の大野亀
すでに沖縄、奄美、九州などは梅雨入りだが、暦の上では入梅は11日。22日は夏至、30日は夏越祭と1年の半分の折り返しに至る。
梅雨は字の如く梅を熟させ、花菖蒲の花びらを優雅に開かせ、紫陽花の色を変幻させる。作物や草木、果樹には慈雨である。古い歴史の町並みは瓦も道も濡れて、また異なった情趣を深める時とはいえないだろうか。


帝釈峡のシンボルの天然岩橋の雄橋

天然湖の趣の中を遊覧できる神龍湖

緑に包まれて立つ快適な休暇村帝釈峡

好みの料理を選べるバイキングも快適

江戸時代からの店と酒饅頭の竹屋饅頭
鉄道やバスでは結構遠いゆえに訪れる機会はなかったが、神龍湖そばの高台にある「休暇村帝釈峡」を目指して、新見から足を延ばし初めて東城駅に降り立った。迎えてくれたのは休暇村支配人の藤田さん。まだ早いのでと寄ってくれた旧東城町は戦国時代からの小さな城下町で、面影をしのばせる古い家並みが点々とあった。古い店構えの竹屋饅頭本舗(08477・2・0005)で名物の「竹屋饅頭」を買い、プロ野球の中日監督で名捕手の谷繁選手の生家を案内された。初めてなのになぜか身近で懐かしく感じられる町のたたずまいだった。
クルマを走らせて立ち寄った帝釈峡永明寺の本堂は、切り立つ石灰岩の岩壁を背に小さいながら豪華な細工を施してひっそりとあった。伝えでは行基菩薩の開基という由緒ある寺で、一帯の地名は本尊の帝釈天に因んでいる。
駐車場の先からの渓流沿いには縄文から鎌倉時代にかけての遺物が出土した寄倉岩陰遺跡や石灰岩洞窟の白雲洞、崩れた石灰洞の鬼の唐門などの奇勝が連なる。20分ほど歩くと、頭上高くどっしりかかる雄橋(おんばし)があった。「渓水の浸食作用でできた石灰岩の天然橋で、帝釈峡のシンボル。世界3大橋の1つだそうです」と空を仰ぎながら藤田さん。高さ40メートル、長さ70メートル。中空にかかる“神の橋”とも呼ばれているという。
クルマに戻ってスコラ高原を経て神龍湖を経て着いたのは泊まりの休暇村帝釈峡。緑に囲まれた3階建の瀟洒な建物で、ロビーや客室は清潔で明るく、展望大浴場や露天風呂、テニスコート、キャンプ場まで揃っている。ゆったりくつろげるリゾートホテルで、オープンキッチンでは焼き立ての広島牛のステーキやお好み焼きをはじめ、地場産の食材をふんだんに使った工夫を凝らした料理が好みのままに選べるバイキングスタイル。静寂と暗闇に包まれた夜はふだんよりはるかに早く、まどろみに引きかまれた。
翌日に寄ったすぐ近くの神龍湖は周囲24キロ、全長8キロ、帝釈川のダムで生まれた細長い人造湖で、澄んだ湖水と迫る新緑の湖岸と真っ赤な神龍橋の風光の中を行き交う遊覧船は心に目に染み入る時間だった。帝釈峡の素晴らしさは歩かなくてはといわれたが、昼には湖を後にした。次は2~3泊の予定で訪ねようと思った。
〈交通〉・芸備線東城駅から神龍湖までバスで18分
・中国自動車道東城ICから帝釈峡まで約10㌔
〈問合せ〉
・帝釈峡観光協会☎08477・2・0525
・休暇村帝釈峡☎08477・2・3110
・神石高原町観光協会☎0847・85・2201


宿場の面影を残す旧道の日光街道

青春を過ごした蔵の永井路子旧宅

木村屋が誇る名物の鮒の甘露煮

Café雪華の「カレーめん」700円

くつろぎ感のある古河文学館

風情のある鷹見泉石記念館界隈
室町時代にこの地に入った足利成氏が古河公方と称して権勢を奮い、関東一円の政治の中心だった。江戸時代には土井氏をはじめ代々徳川譜代大名が治めた重きをなした城下町で、日光街道の宿場としても大いに栄えた。
駅内の観光協会でマップを貰い、レンタサイクルで町巡りをした。停車場通りのすぐ先の本陣跡に面する日光街道は、鍛冶町通りで左に折れて、よこまち柳通りの愛称の旧街道が北に延びていた。蔵造りの商家や飲食店に宿場町の面影が残るその旧街道を引き返し、杉並通りを歩くと武家屋敷街の名残がかすかにあった。周辺には城主土井氏の菩提寺の正定寺など古寺社が点在し、城下町の風情が感じられる。
江戸通りには白壁土蔵造りの作家・永井路子旧宅やレンガ建ての展示コーナー・ギャラリーの街角美術館、石蔵を改装し古河出身の篆刻(てんこく)家・生井子華の遺作など作品を展示する篆刻美術館など見どころが連なる。
その近くの古河城出城跡に古河文学館と古河歴史博物館があった。青春期の20年をこの地で育った作家・永井路子をはじめ和田芳恵、小林久三、佐江衆一らゆかりの文学者の多いことに驚く。
歴史博物館では11代藩主にして日本初の雪の結晶研究で知られ、幕府老中も務めた土井利位の功績や、彼の家老ですぐれた蘭学者であった鷹見泉石の業績を知って古河の歴史と文化の奥深さに感銘を受けた。
古河は人口14万5000余。東京、埼玉等への通勤圏。住民や意識も変わったが、古くからじっくり手間暇かけた鮒や鮎など川魚料理は今も変わらぬ名物で、田村家(0280・22・0023)や木村家(0280・22・0679)など5店が味を競い合っている。
銘菓も藩主・土井利位に因んだ桂月堂(0280・31・2510)の落雁「雪華」や篆刻家・生井子華の篆刻文字の焼印を押した明石家本店(0280・22・0012)の「許我どら焼」など10店ほどある。
唐辛子取扱高日本一の黒岩食品があることに因んで数年前に町おこしの一環として立ち上げた「七福カレーめん」がじわじわ広がりをみせていた。
〈交通〉・東北本線(宇都宮線)古河駅下車
〈問合せ〉
・古河市観光協会(総和庁舎内)☎0280・91・1811
・古河観光案内所(JR古河駅内)☎0280・30・3434