
今年もすでに2月です。"大"の月に比べ3日も少なく、締切、仕切りが早まって忙しい感じが強まります。短いのは損なのでしょうか、得なのでしょうか?
それにしても日本列島において2月ほど季節感に差がある月はないのではないでしょうか。南国では立春を過ぎると、菜の花や梅が咲き出し春への助走、けれど北国では厳冬最中、雪や氷の祭り、ウインタースポーツの花盛り。流氷も押し寄せています。どか雪、吹雪さえまだまだあります。
差異がないのが旧城下町などで催されるようになった「雛めぐり」ではないでしょうか。
雪見の温泉もよし、観梅も河津桜もまたよし。


うぐいす餅の発祥といわれる「菊屋の御城之口餅」
梅に鶯……取り合わせのよいことのたとえですが、実は梅の花に集まるのはメジロが多く、鶯はめったに来ないそうです。
けれど早春のお菓子といえば「うぐいす餅」。こし餡やつぶ餡を求肥や餅皮で丸く包んで、青大豆の粉(うぐいす粉)をまぶしたものです。丸めた餅を左右に引っ張り、鶯のような形にしたものもあります。
きな粉の香ばしさ、餅皮の柔らかさ、餡のしっとり感など早春の匂い、色合い、味わいを感じます。全国各地の多くの和菓子屋で作られます。
うぐいす餅は約400年前、大和・郡山城主だった豊臣秀長が兄の秀吉を招く茶会用に菓子屋に作らせたもので、大いに気に入った秀吉が"鶯餅"と名付けたと言います。
店の「菊屋」が大手門前にあったのでいつしか「御城之口餅」の菓名になって、今も人気が続いています。
菊屋 ☎0743・52・0035


年中花に迎えられる千葉市の花の美術館

中央卸売市場そばで食べた江戸前穴子海老天丼

関東大震災にも耐えた旧神谷伝兵衛稲毛別荘
政令都市指定20年を過ぎてますます都市化が進む千葉市ですが、首都圏にあって古くからの史跡を秘める歴史の町としての魅力も数多くあります。
観光協会では観光ボランティアガイドが案内する「まち歩き観光ガイドツアー」を随時開催していますが、その1つ、稲毛(いなげ)エリアをめぐる「稲毛海岸物語」に参加してきました。
集合は総武本線幕張本郷駅。千葉市民の台所の千葉中央卸売市場の水産棟や物販、飲食店の集まる関連棟を見学、海鮮や肉などの商店を見学、買い物をして次に訪れたのは「花の美術館」でした。
前庭はラベンダーやコスモスなど四季に咲き競う花壇や花畑。ガラス張りのアトリウムフラワーガーデンでは季節ごとにテーマを決めた植物展示。温室ではヤシやヘゴ、バナナ、グアバ、パイナップル、洋ランなど年中実り、花をつけています。
昼は再び中央卸売市場に戻って、市場直結の食材を使った海鮮丼や江戸前穴子海老天丼を賞味。美味しくボリュームいっぱいで、お得感のあるランチでした。
コースの中で印象的だったのが、稲毛浅間神社を中心にした、かつて海水浴で賑わったリゾートの稲毛地区。なかでも植栽のある庭園に白亜、2階建の凝った洋風建物の旧神谷伝兵衛稲毛別荘です。ロマネスク様式の1階ピロティ、寄木造り床の広間、ワインにちなむ葡萄の木の床柱の和室などに目を見張りました。
"日本のワイン王"と呼ばれた明治の実業家・神谷伝兵衛が別荘として大正7年に建てたとのこと。浅草の神谷バーのデンキブラン、牛久シャトーの創始者です。
<問合せ>
・千葉市観光協会 ☎043・222・0300


一幅の絵画のように開ける対潮楼からの眺め

蔵屋敷や土蔵が趣ある風景をつくる鞆の路地

薬味酒として江戸時代から続く鞆特産の保命酒の店
福山市街の南、沼隈半島の先端の鞆(とも)の浦は、穏やかな瀬戸内海に臨む、古くから潮待ちの船で栄えた港町です。
鯛網など漁業も盛んですが、海上に浮かぶ仙酔島、弁天島など緑の島々は絵のように美しく、万葉集にも詠まれています。宮城道雄の名曲『春の海』もここで生まれたそうです。
この景勝を額縁付きで見られるのが、江戸時代に創建された福善寺の客殿・対潮楼(たいちょうろう)。開け放された座敷の向こうにまるで一幅の名画を思わせます。畳の間に正座してしばし見入ったり、背景にして記念撮影する人が後を絶ちません。
入江に沿って歩くと港にひしめく小舟、潮風の抜ける路地を歩けば廻船問屋や保命酒(ほうめいしゅ)商家の白壁の蔵屋敷や土蔵、格子窓の商家や町家、20を超える風格のある古寺社など歴史の染み込んだ古くて美しい町並みがそこここに連なっています。
歴史民俗資料館の立つ小高い鞆城跡に立つと、波静かな港を囲んで起伏のある地に密集する古寺や民家の瓦屋根、仙酔島の景勝などが足元に広がっていました。
琴の名曲『春の海』のように心に響く町でした。
<問合せ>
・福山市観光協会 ☎084・926・2649
・鞆の浦観光情報センター ☎084・982・3200