風土47
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椿山荘庭園の桜
花が群がるように咲いて散り始めるころに葉が出る(東京・椿山荘庭園にて)
 各地から花の便りが聞かれる4月の日本列島は、桜前線が北上する季節です。前線の基準になるのが明治時代、東京・染井の植木屋から広がった交配で生まれたソメイヨシノで、成長が早く、葉に先立って淡紅色の美しい花びらをたくさんつけるのが特徴で、日本人には特に好まれるのでしょう。城跡や川岸、街路にたくさん植えられています。

 この花見は昔から春の風物詩で、花の盛りを目指して旅をする人も多く、ご存じのように花の下での宴は国民的行事になっています。美しさとともに春到来の喜びがそうさせるのでしょう。

 「ソメイヨシノは人の顔。鼻(花)より前に歯(葉)は出ない」なんちゃって…。

4月中必ず花の盛りに出合える吉野山(奈良県)

吉野山名物の桜ようかん吉野山名物の桜ようかん。ただし吉野では桜はご神木だからこのように使うのは禁止。伊豆の桜の花びらです。1本850円。
 3万本の桜で知られる日本一といわれる桜の名所の奈良県吉野山では3月27日~4月25日までが桜まつり。

 3月下旬には麓の下千本から咲き始め、尾根の中千本、上千本と咲き進み、下旬は谷の奥千本へと順次盛りを移して行きます。

 吉野の桜はシロヤマザクラで、花びらと一緒に若芽が出るのが特徴で、「盛りと聞いて来たけどもう葉桜なの」とがっかりする人も多いそうですが、若緑の葉が花の色を引き立てて風情があることをお見落としなく。

 花より団子の人には仁王門門前の萬松堂など色よく香りく甘さもほどよい花見だんごや草餅があるし、みやげにはピンクの花びらを封じ込めた透明な寒天と抹茶色の羊羹台を合わせたきれいな「桜ようかん」もあります。

<問い合わせ>
・奈良県吉野町観光商工課☎0746-32-3081
・奈良県吉野町吉野山観光協会☎0746-32-1007
・萬松堂☎0746-32-2834


随所に湧水ごぼごぼの水の都・西条(愛媛県)

うちぬき西条にはこんな湧水所が至る所に。誰でも無料で取水できます。ぬきうち検査なしでも水質安全。
嶢風庵の飲茶セット水が美味しいせいか、味わいも格別な飲茶セット。1200円。
 春の訪れとともに白装束のお遍路さんの姿がめっきり増えた四国路。64番から65番へ向かう時に通り抜ける西条市は、知る人ぞ知る“水の都”です。

 石鎚連峰に発する加茂川の清流が地下に浸透して湧き出し、市内約2000ヶ所に“うちぬき”と称する湧水所があり、市民に限らず近県からもポリタンクを並べて水を汲む姿が途切れません。

 地面を打ち抜けばたちどころにごぼごぼと自噴。飲み水や生活用水がタダなのです。水量の多さだけでなく全国利き水大会でも2年連続日本一となったとてもおいしい水でした。今の時代、天然の水が何よりのご馳走かもしれません。

 親水公園のアクアトピアの一角にある江戸時代の西条藩家老屋敷を改装した風雅なギャラリート庭園付きのカフェ「嶢風庵」(ぎょうふうあん)で食べた飲茶セット(1200円)もイキでおいしい味わいでした。

 そういえば「千の風になって」で大ブレイクした声楽家の秋川雅史さんは西条の出身だそうです。

<問い合わせ>
・愛媛県西条市観光振興課☎0897-47‐3575
・嶢風庵☎0897‐55‐3118(木~日曜の週後半4日間営業・11:00~18:00)

中尾隆之
中尾 隆之(旅行作家)高校教師、出版社を経てフリーランスライターに。月に10日は取材旅行の現場主義で、町並み、鉄道、温泉、味覚等の紀行コラム、エッセイ、ガイド文を執筆。とくにお菓子好きで、新聞、雑誌にコラム連載のほか、『全国和菓子風土記』の著書もある。2007年8月に「全国土産銘菓選手権初代TVチャンピオン」(テレビ東京系)に。