風土47
今月の旅・見出し
 
 
兵庫県■塩と義士、「忠臣蔵」のふるさとの城下町・播州赤穂


往時をしのばせる復元の大手門と大手櫓

赤穂義士も眠る歴代藩主菩提寺の花岳寺

大石内蔵助はじめ義士を祀る大石神社

かん川本舗・和楽庵の「討入りそば」

寒梅粉で包んだ甘みすっきりの「塩味饅頭」

駅前から城跡に向かうメインのお城通り
 兵庫県西南部、千種川右岸の瀬戸内海近くにひらけた赤穂は、常陸・笠間から転封した浅野長直を藩祖とする5万3000石の城下町。塩田開発による良質な”赤穂塩“の産地としても栄えた。

 だが3代藩主・浅野内匠頭長矩が江戸城・松の廊下で吉良上野介義央を斬りつけた事件で、切腹を命じられ、お家断絶。主を失った筆頭家老・大石内蔵助良雄ら赤穂浪士は1年9ヶ月後の元禄15年12月14日夜、47人で江戸・吉良邸に討入り無念を晴らしたが、幕府の命で全員切腹した話はよく知られている。

 人々はその忠誠心を讃え、浪士から義士に呼び方が変わった。のちに人形浄瑠璃や歌舞伎、映画、ドラマなどに脚色され、今も日本人好みの歴史ロマンとして人気を博している。

 そのあと城主は永井氏1代、森氏12代と代わって明治維新まで続くが、赤穂義士の町のイメージは今も強い。とりわけ討入りの12月14日に催される「義士祭」には人口4万8000余の町に平日でも5~6万人、8日から始まる「忠臣蔵ウィーク」を合わせれば10万人余が押し寄せて、町は「忠臣蔵のふるさと」一色に染まる。

 この期間に限らず、駅前には大石内蔵助像、5分ほど南には義士木像堂や義士墓所もある浅野家菩提寺の花岳寺(0791・42・2068)、さらに南には復元した大手門や大手櫓、本丸御殿からなる赤穂城跡など義士づくめ。

 その城域に大きな敷地を持っていた大石邸宅跡地には大石内蔵助(良雄)邸宅長屋門、内蔵助ら47義士らを祀った大石神社(0791・42・2054)などゆかりの建物があり、昔から赤穂義士のロマンを訪ねる観光客が絶えない。

 地酒にも赤穂塩にも「忠臣蔵」の銘柄があり、義士ゆかた、義士てぬぐいも販売。かん川本舗大手門前店(0791・43・7201)の和楽庵に、その名も「討入りそば」があったので食べてみた。コシのある食感に義士の意地が感じられた。

 赤穂が栄えた1つに古くからの塩づくりがあるが、大規模になったのは江戸時代前半の浅野氏の時代。製法は変化と進化を遂げて生産量は上下したが、今もミネラル成分のバランスに優れた上質な自然塩が作られている。

 代々の赤穂藩主が将軍家に献上して喜ばれた小豆餡に赤穂塩をきかせたすっきりした甘さの元祖播磨屋(0791・42・2300)の「塩味饅頭」も絶品である。

〈交通〉
・JR赤穂線播州赤穂駅下車
〈問合せ〉
・赤穂市産業観光課☏0791・43・6839
・赤穂観光協会☏0791・42・2602
千葉県■温暖な気候と豊かな海に恵まれた歴史と美味の館山


館山城から見下ろす浦賀水道・館山湾の眺め

岩にへばりつき、崖の観音と呼ばれる大福寺

人気の新名物の豪勢な「館山炙り海鮮丼」

渚の駅・なぎさ食堂のおしゃれなパスタ

景観も温泉も食事も快適な休暇村館山

規模の大きさに驚く戦争遺跡の赤山地下壕
 房総半島南西端を占める館山は海洋性の温暖な気候や風光に恵まれた観光都市。浦賀水道や太平洋に臨んで、冬のうちに菜の花が咲き、1月にはポピー、ストック、キンギョソウなどの花々が早い春を謳う。

 暖かな気候風土のため、古代には国府が置かれ、中世には八犬伝でおなじみの里見氏が居を構え、近世には稲葉氏1万石の城下町となった。

 それらの歴史をしのばせるのが、717年に行基が崖面に安置した十一面観音が始まりという、崖に張り付いた舞台づくりの崖の観音と呼ばれる大福寺(0470・27・2247)や、一木造りの千手観音が源頼朝、足利、里見、徳川各氏の信仰を集めた那古山中腹の那古寺(0470・27・2444)、城山山頂に天守閣を象った建物の館山城(八犬伝博物館)や麓に立つ館山市立博物館本館(0470・23・5212)など。それぞれからの眺望も素晴らしい。

 太平洋戦争中に海軍航空隊が置かれた要塞的な機能を担った大規模な地下壕の赤山地下壕(0470・24・1911 豊津ホール)は、全長1.6㎞のうちのわずか250mの公開だが、みごとさが体感できた。

 食事ならプレミアムご当地グルメを4つの食事処で共通展開する、特製三段どんぶり膳の「館山炙り海鮮丼」(1800円食数限定)が話題で人気のメニューだ。その1軒のたてやま温泉・千里の風(0470・28・2211)で賞味した。自分の手での炙り海鮮・刺身・海鮮丼の豪勢で美味なランチだった。

 黒潮の海や温暖な大地からの恵み多い館山はよく知られた“食の町”。生きのいい魚介の鮨をはじめ伊勢エビ、金目鯛、アジ、サバ、イワシなどの海鮮料理の店が数多くある。1月2日からはいちご狩りも始まる。

 それらの物産を買い求めるには、館山夕日桟橋たもとの渚の駅館山の海のマルシェ(0470・28・4926)で。朝採れの房総野菜や朝一番の漁から直送の新鮮魚介、地元で愛されてきた珍味や銘菓などが売られている。

 眼の慰めにはポピーの里・館山ファミリーパークや、南房パラダイスからハワイアンムードに変身のアロハガーデンたてやまなどがお薦めだ。

 泊まりは館山温泉郷、全室オーシャンビューの休暇村館山(0470・29・0211)など大小の宿はそれぞれに粒ぞろいである。

〈交通〉
・JR内房線館山駅下車
・東京駅八重洲南口から高速バス「房総なのはな号」で館山下車
〈問合せ〉
・館山市観光協会☏0470・23・3000
・館山市商工観光課☏0470・22・2544
 
中尾隆之
中尾隆之(なかおたかゆき)
高校教師、出版社を経てフリーの紀行文筆業。町並み、鉄道、温泉、味のコラム、エッセイ、ガイド文を新聞、雑誌等に執筆。著作は「町並み細見」「全国和菓子風土記」「日本の旅情60選」など多数。07年に全国銘菓「通」選手権・初代TVチャンピオン(テレビ東京系)。日本旅のペンクラブ代表・理事、北海道生まれ、早大卒。