風土47
今月の旅・見出し
 
 
北海道■港と坂道に寄り添う郷愁と異国情緒の函館・元町


両側に海が迫る地形に市街地が函館山からの展望。夜景も素晴らしい

赤レンガの金森倉庫群を中心にするモダンな明治の面影のベイエリア

朝市で古くから人気のきくよ食堂の名物の海鮮丼「元祖函館巴丼」

函館みやげとして人気のふわふわとろりのペイストリースナッフルスの「チーズオムレット」

カトリック元町教会やハリストス正教会などが集まる異国情緒の元町

港を見下ろす坂道の函館を代表する八幡坂。海に浮かぶのは摩周丸
 開業1年9ヶ月の北海道新幹線。終点・新函館北斗駅まで行って、「あなたの“あの頃”に出会う街」の謳い文句にひかれて異国情緒の港町・函館を訪ねた。

 初年度ほどではないが、函館駅は国内外の観光客であふれていた。駅前の朝市も座り売りの野菜売り場が整備され、スマートに様変わり。それでもカニ、イカ、サケなどの鮮魚や塩干物の売り場や食堂など相変わらずのにぎわいだった。

 昼食にしたのは、きくよ食堂で、昔から人気の新鮮なウニ、イクラ、ホタテがたっぷり味わえる「元祖函館巴丼」。青函連絡船記念館「摩周丸」をのぞいて港に沿う道をベイエリアまで歩く。そこは港町として殷賑を極めた明治の赤レンガ倉庫群を改装してショッピングとカフェ、レストランが集積した人気のスポットだ。港の歴史に潮風が絡むノスタルジックなエリアである。

 のこぎり屋根の背景に外国人の居留した函館山山麓の元町の教会の塔がのぞく。その頭上がロープウェイのかかる函館山で、ゴンドラが上り下りする。坂道の一つの石畳の大三坂を上ると、ゴシックの赤い尖塔がすくっと空を指すカトリック元町教会、オペラハウス風の聖ヨハネ教会、緑の塔と白壁のビザンチン様式のハリストス正教会が隣合って、エキゾチックな情緒を色濃く漂わせる。

 滑り台のように下る函館のシンボル的な明るい八幡坂や、幅広くゆるやかな基坂など港や町が大きくひらける。基坂からは黄色と水色の壁が印象的な旧函館区公会堂、ブルーの縁取りが鮮やかな旧イギリス領事館(開港記念館)、豪商で鳴らしたモスグリーンの相馬などモダンな明治の木造洋館が点在し、坂の下をよぎる路面電車にひとしきり郷愁を誘われる。

 ロープウェイで函館山に上ると、眼下にひらけるカラフルな塔や民家の屋根が密集する街の眺め、きらめく夜景にも胸がときめく。

 函館はエキゾチック、ロマンチック、ノスタルジックを散りばめた、自分のうちなる“あの頃”に出会える魅力あふれる町である。

〈交通〉
・JR函館本線函館駅下車
〈問合せ〉
・函館市観光部☏0138・21・3323
・函館国際観光コンベンション協会☏0138・27・3535
鹿児島■大河ドラマ『西郷どん』で熱い鹿児島・加治屋町


燃える思いの薩摩の心のシンボル、噴煙が絶えない雄々しい桜島

ナポリ通りにある情報入手や休憩ができる観光交流センター

幕末・維新の英傑や薩摩の歴史を伝える南洲橋たもとの維新のふるさと館

西郷隆盛・従道の生家跡に立つ木立に包まれた誕生地の石碑

食事は歯切れよく柔らかな肉質の鹿児島特産のかつ寿の「黒豚ヒレかつ定食」

市内の観光ポイントを60分で巡る便利なカゴシマシティビュー
 九州新幹線の終点・鹿児島中央駅。昨年秋、NHK大河ドラマ『西郷どん』の放映を控えて沸き立つ鹿児島の町を旅した。

 駅の正面にまっすぐのびるナポリ通りを5~6分歩いて観光交流センターに立ち寄った。後ろに流れる甲突川の対岸が幕末・維新に活躍した西郷隆盛や大久保利通らが生まれ育った加治屋町。

 南洲橋を渡ってまずはたもとに建つ維新のふるさと館に入った。1階の英雄の道のコーナーで、西郷と大久保のエピソードや薩摩藩独特の郷中教育、大奥を束ねた篤姫(天璋院)などの展示で、地下1階の維新の道コーナーの映像で激動の時代を学んだ。すぐ近くに1年限定の大河ドラマ館が1月に開設されるという。

 ここ加治屋町は城下のはずれにあたり、慎ましやかな武家屋敷が70軒余りあった下級武士の居住地。大政奉還や江戸城無血開城など維新の立役者の英傑・西郷隆盛をはじめ、数多くの要職をこなした弟の西郷従道、従弟で陸軍大臣を務めた大山巌、海軍大臣の職にあった東郷平八郎ら多くの偉才が生まれている。

 近くの高麗橋を渡った所には西郷と並んで維新三傑と称された大久保利道が生まれ、加治屋町で育っている。まさに維新のふるさとである。

 その背景には同じ町内(郷中)の年長者が年下の幼少者に学問や武芸、体力づくりを指導、切磋琢磨する自治的教育方式があったという。教師も教室や道場もなく、家を行き来しながら24~25歳から6~7歳らの青少年が、教えたり、教えられたり、一緒に遊びながら武芸や礼儀、体を鍛錬。年少時から四書五経を学んだという。

 甲突川の下流にどっしりそびえる火の山・桜島。この雄々しい姿も気風に何らかの影響を与えたのではないだろうか。

 中央駅前から出る循環バスのカゴシマシティビューを乗り降りして、西郷銅像や薩摩義士碑、西郷洞窟、城山、南洲墓地などゆかりの地も見学した。どこにも人の姿があり、花が絶えず、維新150年の今も西郷どんへの思いが燃え続けていることを実感した。

〈交通〉
・九州新幹線鹿児島中央駅下車
〈問合せ〉
・鹿児島市観光振興課☏099・216・1327
・鹿児島観光コンベンション協会☏099・286・4700
 
中尾隆之
中尾隆之(なかおたかゆき)
高校教師、出版社を経てフリーの紀行文筆業。町並み、鉄道、温泉、味のコラム、エッセイ、ガイド文を新聞、雑誌等に執筆。著作は「町並み細見」「全国和菓子風土記」「日本の旅情60選」など多数。07年に全国銘菓「通」選手権・初代TVチャンピオン(テレビ東京系)。日本旅のペンクラブ代表・理事、北海道生まれ、早大卒。