風土47
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しっとり旅情も濡れる6月の旅

 月日の経つのは早いものです。今年も半分に迫る6月になりました。

 沖縄はすでに梅雨入り。日本列島も南から入梅を迎えます。紫陽花が花びらをひらき、膨らむように大きくなって、青くなったり、紫を強めたり色を移ろわせます。七段花、七変化とも八仙花と呼ばれたりします。そんなことから花言葉は「移り気」。

 梅雨のある日本では全国各地に紫陽花の名勝がたくさんあります。

 長崎・グラバー園、島根・松江・月照寺、奈良・矢田寺、形原温泉あじさい園地、福井・足羽山公園、奈良・矢田寺、静岡・下田公園、神奈川・鎌倉・明月院、千葉・麻綿原高原などで6月上旬から7月中旬まで咲き続きます。

 木の葉、草の葉青々として、宿も乗り物もすいていて、料金も安め。雨の時は、宿でゆったり、普段はかけ足になりがちな美術館・博物館などをプランに入れるにはもってこいの時です。

サクランボが実り、梅が熟する時

サクランボたわわに実ったサクランボ
 6月はサクランボの最盛期。サクランボ王国の山形県では観光果樹園が次々の開園、7月中旬までサクランボ狩りが楽しめます。

 主要産地の寒河江市の「さくらんぼ祭り」(6月1日~7月15日)ではサクランボ狩り、俳句大・マラソン・種飛ばしの各大会を開催、東根市では「種飛ばしジャパングランプリ」(6月14日)が行われるなどにぎやかです。

 問合せ=寒河江市商工観光課 0237-83-3380
     東根市商工観光課  0237-42-1111

女性に捧げ、豪商を生んだ「紅花」

咲き誇る紅花咲き誇る紅花
紅花製品(乾燥品)紅花製品(乾燥品)
 このサクランボの盛りと入れ替わるのが、山形ならではの「紅花」の開花です。江戸時代、口紅や友禅染などの原料として京の都などで重用された紅花は 最上川流域の特産物でした。これを扱う紅花問屋は、「紅花大尽」と呼ばれて財を築いた豪商で、河北町谷地だけでも20軒余もあったそうです。

 今は化学染料などの出現によってすっかり衰退。山形市郊外や河北町あたりで、観賞や伝統保存にわずかな農家が栽培するだけになりました。

 紅花は黄色い花びらの芯に紅を秘めたキク科の一年草で、毎年、半夏生(はんげしょう)の7月2日頃、咲きだします。「半夏一つ咲き」といって畑のどの花かが一つ咲きだすと、見習うようにほかの花が次々に咲き続くという不思議な花です。明るく黄色く輝かしい可憐な花ですが、葉に鋭いトゲがあって,摘む時には手袋をはめます。それでも指先に血がにじむことがあるそうです。

 紅花は保温、抗菌、防毒などの効果もあり、口紅、肌襦袢(はだじゅばん)など女性の肌に近いものに使われたのです。今も紅花染めのほかに、紅花油など健康志向の時代に見直されています。

 奥の細道の旅で松尾芭蕉も紅花の盛りに出合って、「行くすゑは誰が肌ふれむ紅の花」と一句残しています。

 問合せ=紅花資料館 0237-73-3500

中尾隆之
中尾 隆之(旅行作家)高校教師、出版社を経てフリーランスライターに。月に10日は取材旅行の現場主義で、町並み、鉄道、温泉、味覚等の紀行コラム、エッセイ、ガイド文を執筆。とくにお菓子好きで、新聞、雑誌にコラム連載のほか、『全国和菓子風土記』の著書もある。2007年8月に「全国土産銘菓選手権初代TVチャンピオン」(テレビ東京系)に。