
今でこそバリアフリーやユニバーサルデザインの考えが浸透しましたが、連載が開始された2006年はまだ浸透度合いが現在の1~2割という感じでした。
ある大手ホテルチェーンが、バリアフリールームスペースをこっそり一般客室に変更するという法令違反を犯し、問題になった事件を覚えていらっしゃる方も多いでしょう。あれがちょうど8年前の2006年でした。


あまり需要の無かった時に、車イスの方も旅に出てほしいという想いで“バリアフリーの温泉宿”の連載を決めた旅行読売出版社の編集部は立派だなと思いますし、何より、そのころから高い意識を持って真摯にバリアフリー化に取り組まれていた宿のオーナーさんたちがいらっしゃったことに感激しました。
数は決して多くはなかったのですが、湯田中温泉「はくら」、飛騨高山の「高山グリーンホテル」、三重の「湯元榊原館」、伊豆の「サンバレー伊豆長岡・和楽」など、ソフト面もハード面も当時から充実していました。(写真は、宿では全国で最初に設置されたといわれる高山グリーンホテルの車イスで入浴できるリフトです)
そこで、連載開始当時に紹介した宿をもう一度詳しくカラーでご紹介しようと、久しぶりに再取材させていただいた宿が数軒あります。
そのうちの1軒が河口湖のほとりに立つ「富士レークホテル」です。約8年ぶりに訪れて驚いたのは、バリアフリーに関するハードもソフトも格段に進化していたことです。私が知る限り、バリアフリーの温泉宿として全国でBest3に入ると思います。(写真は、富士レークホテルの湖を望むロビーです)


今では、赤ちゃん連れの“ママ&ベビー”や、外国人宿泊客もUDルームを利用するようになり、一気に稼働率も上がったそうです。富士山の世界遺産登録も追い風になり、国内外からの宿泊客が増えたそうです。
お話を聞いていて、私も本当にうれしくなりました。(写真は露天風呂付き客室での井出社長)


この連載を担当させてもらってつくづく感じたのは、多くの人が「こうだったらいいのに」「こうあるべきだよね」と感じていることは、その時は困難に思えても、必ず皆がいいと思う方向に進んでいくということです。少しずつでも動き出せば進み始めて、やがて加速度がつき、決して後戻りしないのだなと。正しい流れは後戻りしないと実感しました。(写真は飛騨高山の陣屋にて。観光名所でもバリアフリー化が進んでいます)
この夏、全国のバリアフリーツアーセンターが集まって北海道旭川で行われた「バリアフリー観光全国フォーラム」は、パラリンピックの監督や選手の講演も行われ、大盛況でした。
主催者の言葉で印象的だったのは「バリアは無くすものではなく、楽しむものになりつつある」という言葉です。車イスの方にとってバリアだと思われる雪や海なども、今は観光として楽しめるようになってきているのだそうです。
8年前には想像もしなかったこと。更なる進化が楽しみです。
