
このコラムでは、フリーのライターとして旅行やインタビューの仕事をしていく中で、おもしろいなと思ったことを不定期でゆるーくお伝えしていきたいと思います。
■たかが観光、されど観光
頭で理解したつもりになっていたことが、何気ない体験で“腑に落ちる”ことがあります。それを一つ思い出しました。前置きが長くなりますが……。
それは秋田県内陸部の仙北市にある抱返(だきがえ)り渓谷の取材に出かけたときのことです。
抱返り渓谷は鮮やかな空色の清流が特徴の美しい渓谷です。
それは秋田県内陸部の仙北市にある抱返(だきがえ)り渓谷の取材に出かけたときのことです。
抱返り渓谷は鮮やかな空色の清流が特徴の美しい渓谷です。


青い川面が本当にきれい。新緑、深緑もですが、紅葉の美しさは格別。片道1.5㌔、徒歩約30分の遊歩道が整備されています。
抱返り渓谷のそばに(そばと言っても車で20分ほど)、一軒宿の夏瀬温泉「都わすれ」が立っています。夏瀬温泉は古くから地元の人たちに愛されてきた名湯。しばらく閉鎖された状態でしたが、9年ほど前に、今のオーナーによる「都わすれ」が誕生しました。


こんな素敵な露天風呂付きの部屋もあります。人里離れた大自然の中の一軒宿は、まさしく都の喧騒を忘れるのにはぴったり。芸能人の訪れなども多いそうです。
当初はお風呂だけ撮影させていただき、他の宿に泊まるはずだったのですが、宿の社長さん曰く「うちの良さは泊まっていただかないと分からないから」と。
確かに客室も泉質もお風呂もよかったのですが、その食事とサービスは感動しました。
確かに客室も泉質もお風呂もよかったのですが、その食事とサービスは感動しました。


食事処に旬の食材が運ばれてきます。こんなウニも登場。
イワナの塩焼きもおいしかったです。


秋田産の由利牛も目の前で焼きます。
比内地鶏つみれ鍋も宿の人気メニューだそうです。


田沢湖産の根曲がり竹も。
料理のおいしさはもちろんなのですが、この合間に、口が脂っぽくなったなと思ったらお茶が出て、手が汚れたなと思ったらおしぼりが出て……。と、その配慮に感服します。
料理のおいしさはもちろんなのですが、この合間に、口が脂っぽくなったなと思ったらお茶が出て、手が汚れたなと思ったらおしぼりが出て……。と、その配慮に感服します。
これはデザート。
この日の夕食は、たまたま台湾から来た宿泊客の方々とご一緒でした。デザートが出るころ、その中のお一人が「日本の旅館の心配りはすばらしい」としみじみおっしゃいました。そして、日本に来るたびに、日本人の人を思いやる心に感動する、私は日本が大好き、と。
この日の夕食は、たまたま台湾から来た宿泊客の方々とご一緒でした。デザートが出るころ、その中のお一人が「日本の旅館の心配りはすばらしい」としみじみおっしゃいました。そして、日本に来るたびに、日本人の人を思いやる心に感動する、私は日本が大好き、と。


そのとき思い出したのが、まだ私が若かったころ聞いた先輩旅行ライターAさんの言葉です。あるパーティで名刺交換した男性が「なんだ、観光のライターか」とAさんの名刺を丸テーブルの上に投げて立ち去ったのです。私はびっくり。でもAさんは泰然として「たかが観光、されど観光。国際交流による相互理解ってやつにかなり役立ってるよなぁ」と。夏瀬温泉の夜、台湾の方に言われた言葉で、あの時は今一つピンとこなかったAさんの言葉、観光の意義が腑に落ちました。ちゃんと仕事しなきゃ、と改めて思った次第です。
ちなみに写真は、海苔一枚の産地にもこだわった朝食。おいしかったですよ。
ちなみに写真は、海苔一枚の産地にもこだわった朝食。おいしかったですよ。