大粒で甘く、冷めてもおいしい|岐阜県輪之内町|徳川将軍家御膳米


江戸時代、徳川将軍家はどこの米を食べていたのだろう。全国からおいしいものが集まったはずの江戸幕府で将軍家のために選ばれたのは、美濃(岐阜県南部)の米だった。
岐阜県南西部の輪之内町(わのうちちょう)は、江戸時代初期から幕府直轄領として将軍家台所の米を産出してきた。米の品質や管理の良さが古くから評価された土地だったのだ。
美濃地方で多く作られているのは「ハツシモ」という品種の米だ。このハツシモは岐阜県内でほとんどが消費されてしまうため、全国的には出回らず、知名度はあまり高くない。けれど、大粒で米の風味が濃く、冷めてもおいしい。寿司や丼物にも適し、こだわりの飲食店で使用されている、知る人ぞ知る名品種だ。
輪之内町では、町内で生産する米のおいしさを知ってもらおうと、このハツシモについて、生産者や生産ほ場、栽培方法などの基準を定めてブランド化し「徳川将軍家御膳米」と名付けた。化学農薬や化学肥料も減らし、岐阜県が認定する「ぎふクリーン農業30」という安心・安全な米の認証も得ている。
将軍が味わった江戸時代と変わらず、木曽川水系の地下水で育てられた「徳川将軍家御膳米」。新米のおいしい季節を迎えている。
最後に購入方法や問い合わせ先を記載しているのでぜひ味わってみてください。

■輪之内町は堤防に囲まれた輪中の町。大河川が肥沃な土壌を育む
愛知や三重との県境に近い県の南西部に位置し、西に揖斐川、東に長良川、そして南を長良川から分かれた大榑川(おおぐれがわ)が流れる。
水郷地帯に広がるこの町は、「輪中(わじゅう)」といって堤防に囲まれている。
河川によって運ばれた栄養分で肥沃な土壌、そして日当たりのよい平地と豊富な地下水にも恵まれたこの町は、古くから米の名産地だった。
輪之内町の町史には、1838年の検地の記録で、輪之内町で収穫された籾(もみ)が将軍家に納められ、「御膳籾」と呼ばれていたことが記されているそうだ。

輪之内町の水田ではかつて将軍家が食べる米を育てていた

徳川将軍家御膳米生産組合のみなさん
御膳籾の栽培では肥料に藁灰や干鰯を使い、ひと粒ひと粒、手で選別したことなども、「手続書上帳」という書物に記されているという。御膳籾の生産にはさまざまな制約があり、搬送も細心の注意が払われた。
米の品質とともに管理の良さも認められた歴史があるこの土地で生まれたのが「徳川将軍家御膳米」だ。
「自分たちの作った米はおいしい」と自信と誇りを持つ生産農家の人たちが、なんとか輪之内町産の米を世間に認知してほしいと団結。町内18の営農組合で徳川将軍家御膳米生産組合を組織し、販売者や行政と協定を結んで「徳川将軍家御膳米」の価値を発信している。
■毎年、土壌検査を行って肥料を変える。たゆまぬ努力が極上米を育む
輪之内町産のハツシモのなかでも、生産者、生産ほ場、使用する肥料、薬剤も統一し、決められた栽培方法で作られた物だけに限られる。
またこの米は、通常の栽培に比べて化学農薬と化学肥料を30%削減した、岐阜県が認定する「ぎふクリーン農業30」という安心・安全な米の認証も得ている。
輪之内町はおいしい米が育つ条件がそろっている。河川が栄養分を運ぶ肥沃な土壌、日当たりのよい平地、そして江戸時代から米作りに使われてきた木曽川水系の豊富な地下水、気候など。
その上に、「徳川将軍家御膳米」では、毎年、土壌検査を行い、それぞれのほ場の特徴を把握した上で、毎年、使用する肥料の種類や量を変える。環境に加えて、生産者のたゆまぬ努力でよりおいしい米が採れるのだ。

田植え式では、昔ながらの手植えの風景が見られる

たわわに実った稲穂を刈り取る「稲刈り」

地域の人々や子どもたち、一般参加者をあわせて約80名が集まり、終了後はみんなで炊きたての徳川将軍家御膳米や自家製みそ汁を食べる。輪之内町には、今もそんな懐かしく和やかな風景が伝えられている。
産業課の八木さんは、「徳川将軍家御膳米を含め、ハツシモはほとんどが岐阜県内で消費され、他県にはほとんど出回らないので、なじみはあまりないと思いますが、大粒で冷めてもおいしいお米で、寿司米としても人気があります。
また、徳川将軍家御膳米から作った『徳川将軍家御膳酒』、輪之内町産の黒豆も使った『御膳米黒豆ごはん』といった関連商品も人気で、インターネットで販売もしています。ぜひ一度味わってみてください」と自信を持ってPR。
徳川将軍家御膳米が輪之内町の誇りであることが伝わってくる。

平成29年産の徳川将軍家御膳米の生産量は約414トン
■「徳川将軍家御膳米」のお問い合わせ先
◇ | ネットショッピングはこちら |
「ギフライス」 | |
◇ | 田植え式、稲刈り、その他はこちら |
輪之内町産業課 | |
〒503-0292 岐阜県安八郡輪之内町四郷2530-1 | |
TEL:0584-69-3111(内線178) FAX:0584-69-3119 |
取材 中元千恵子(トラベルライター、日本旅行記者クラブ、日本旅のペンクラブ会員)