日本一の柿のまち|五條市の柿

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 秋を代表する味覚の一つである「柿」。“柿が赤くなると医者が青くなる”といわれるほど栄養的にも優れ、日本では古くから食用として愛されてきた。沖縄を除くほとんどの都道府県で収穫されるなじみ深い果物だ(2014年総務省統計局資料より)。鎌倉時代、世界最古の完全甘柿が発見されたのも日本だといわれる。

 その柿について、“日本一の柿のまち”といわれるのが奈良県五條(ごじょう)市だ。平成28年度の柿の収穫量は約2万6600トン。市町村単位では日本一を誇る。

 ただ、“日本一”の称号は生産量だけからくるものではない。試食を行うと「おいしくて、柿の概念が変わった」と驚く人もいるほど、味や食感に優れている。

 栽培に適した気候風土に加え、生産農家の確かな栽培技術が良質な柿を生み出す。

 各地の農業分野で後継者不足が叫ばれるなか、五條市は、柿栽培の後継者が順調に育っている優良産地だ。それは、生産者はもちろん、行政や関係機関、市民も含め、地域一丸となって産業として盛り上げてきた証だろう。

 五條市の誇りである“日本一の柿”。品種を変えて12月まで出荷が続き、全国発送も行っている。問い合わせ先を最後に記載しているので、この機会にぜひ味わってみよう。

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■秋の日差しに照らされて赤い実が輝く丘陵地の柿畑

 
 “日本一の柿のまち 五條”はどんなところだろう。

 市は奈良県西部に位置し、和歌山県と大阪府に接している。

 柿栽培が特に盛んなのは、市内の“西吉野町”とよばれるエリアだ。

 金剛山の麓に続くこの地域は、水はけと日当たりのよい丘陵地に恵まれ、気候や気温も柿栽培に適している。

 特に、収穫時期における昼夜の寒暖差の大きいことが、良質な柿を育む。

 五條市の柿生産の歴史は、大正末期の大正10年頃に始まり、昭和30年代後半から40年代前半にかけて盛んに樹園地の造成が行われた。

 その後も整地が進み、一面の柿畑が広がる。現在では約640戸(2015年調べ)の柿農家が栽培を行っている。

 

実り豊かな秋の柿畑は、日本の原風景とよびたくなる
 
 
 

甘柿の代表的な存在「富有」。味も形もよく、貯蔵性に優れる
 
 五條市は、約6ヶ月間も出荷が続くめずらしい産地だ。

 7月~9月中旬はハウス栽培の「刀根早生(とねわせ)」、9月中旬~10月下旬は露地栽培の「刀根早生」、10月下旬~11月上旬は「平核無(ひらたねなし)」と「早生富有(わせふゆう)」、11月~12月は「富有(ふゆう)」と続く。

 品種それぞれに特徴があり、「平核無」は、果肉がきめ細かくてやわらかく、ジューシー。種がないので食べやすい。

 「刀根早生」は、「平核無」が突然変異したもので、外観も味もほぼ同じだが、早く熟す特徴がある。

 「富有」は人気の高い甘柿。果肉はとろけるようにソフトで、果汁もたっぷり。姿かたちもきれいで日持ちもいい。

 五條市には柿の種類や歴史などが学べる柿博物館もある。

 
 
 

「平核無」など渋柿は脱渋して出荷される
 

奈良県が運営する柿博物館では、柿についてあらゆる知識が得られる
 
 

■「剪定」や「摘蕾」など多くの手をかけて上質な柿が育つ

 
 質のよい柿栽培は、知識と経験が詰まったさまざまな作業の連続だ。

 収穫までの1年間はどのように流れるのだろう。

 「富有」の出荷が終わってホッとしたのもつかの間、12~3月には枝を切る「剪定(せんてい)」や、防虫のために樹の皮を削る「粗皮(そひ)削り」が行われる。

 特に、「剪定」は高い技術力を要する重要な作業だ。大きくて味の濃い果実を育てるためには、枝を厳選して残し、実の数を減らす必要がある。

 また、枝を切ることで、日当たりや風通し、そして作業性もよくなるので、樹木と果樹園全体を形作る大切な仕事になる。

 

剪定作業は技術を要するため、講習会も行われる
 
 
 

摘蕾作業で、円内すべてにあった蕾を減らした
 
 4月下旬~5月も忙しい季節だ。このころたくさんの蕾(つぼみ)が付くので、適度な数に蕾を減らす「摘蕾(てきらい)」を行う。

 いっせいにふくらみ始める蕾を選別し、手作業で取り除いていくため、時間との戦いになる。

 果実が成長する6月~8月には、不要な実を落とす「摘果(てきか)」、不要な枝を落とす「夏季剪定」、そして実が大きくなった枝に支えを作る「添え木設置」などを実施する。

 これ以外にも、土に栄養を与える「施肥(せひ)」、果実に栄養分を集中して送るための「枝剥皮(えだはくひ)」、病気や虫を防ぐための「消毒」など、大切な作業が次々と行われる。

 
 
 
 そしていよいよ収穫を迎える。いっせいに実る柿を出荷時期を逃さないように収穫するため、摘蕾と並んで忙しい作業だ。

 ハウス栽培では、12月~1月頃からハウス内の温度調整をすることで、7月から出荷が始まる。

 柿の生産作業だけでなく、剪定などの技術講習会や、老木を若木に植え替える柿畑の若返りなど、さまざまな取り組みが行われ、さらなる技術と環境の向上に努めている。

 五條市役所農林政策課柿振興室の藤田哲也さんは「熱意ある若手後継者が多いことで、五條市の柿産地は活気に満ちあふれています。7月初めのハウス柿から12月の富有柿まで、約6ヶ月間、出荷しています。五條市自慢の秋の味覚を、ぜひ一度、ご賞味ください!」と力強くPR。

 “日本一の柿”を味わってみませんか?

 

収穫も一つ一つ丁寧に手作業で行う
 
 
 

ハウス栽培の柿は奈良県が生産量トップ
 

選果作業を経て、全国に出荷される
 
 

■「五條市の柿」の問い合わせ先

 
五條市役所 産業環境部 農林政策課 柿振興室
 
 TEL:0747-22-4001
 FAX:0747-22-8210
 e-mail:kaki@city.gojo.lg.jp
 
 
 
    画像提供:五條市産業環境部農林政策課柿振興室、奈良県農業研究開発センター果樹・薬草研究センター(柿博物館)
 


取材 中元千恵子(トラベルライター、日本旅行記者クラブ、日本旅のペンクラブ会員)